泥の魚、わたくし、カモメ ※未完
お題:自分の中の夫 制限時間:15分 文字数:561字
わたくしの足元をぴちぴちと元気よく、あるいは苦しむように跳び跳ねるのは、泥でできた魚たちでした。茶色っぽく寸胴で、目だけが真っ白なので不気味ですし、魚には詳しくないので種類は分かりません。強いて言うならばカツオに似ているでしょうか。
しかしながら、わたくしが海の上、厳密に言えば海水が引いて泥だけになっている場所、を歩いていると絶えず魚がいました。泥の魚たちが泥から飛び上がるので、飛沫も当然泥で、つまりわたくしの素足は足裏以外も泥だらけになっていました。
「およしになったら」
鈴の転がるような声が聞こえたほうに目をやれば、そこには白とグレーの色をした鳥がいました。カモメでしょうか。わたくしは魚以上に鳥なぞちっとも詳しくありませんが、そのカモメもどきは少し離れたところから黄色い嘴を開けました。
「魚たちが嫌がっているわ。あなたも足がどろだらけだし、すぐに洗ったほうが良いわ。そめそも、あなた、何故海のほうへ行くのかしら」
カモメは全く気取った様子で話しますが、不思議と嫌味には聞こえませんでした。ですから、わたくしも礼儀正しく答えることにします。
「約束なのです」
約束?とカモメっぽい鳥は首を捻りました。ぴょんぴょんと飛んで私の近くにやってきます。不思議とカモメの足元では魚たちは跳び跳ねませんでした。




