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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
199/250

Road ※未完

お題:遅すぎた潮風 制限時間:30分 文字数:890字


下を向くとスニーカーの靴紐がほどけていた。先へ行こうとするヨゾラを呼び止め、その場でしゃがんで靴紐を結びなおす。ヨゾラはふうっと息を吐いた。


「ついでにちょっと休憩するか?」


ほどけないようにきつく縛って立ち上がる。


「そうだね。どっか、座れるところあるかな」


きょろっと辺りを見回し、先のほうに二人は座れそうな大きさのコンクリートが転がっているのを見つけた。ヨゾラとともに近くへ寄る。元が何だったのかは判別できないけれど、建物の柱を切り出して横に倒したようなその塊はうまい具合に長い辺が地面と平行になっていた。表面の砂ぼこりをさっと手で払って腰かけ、背負っていたリュックを下ろす。


「うひー、疲れた疲れた。足パンパンだわ」


ヨゾラは言いながら両手でふくらはぎを揉みほぐす。

私は被っていた帽子を脱いで、リュックから取り出したタオルで額に浮かんだ汗を拭った。


「けっこう歩いたよね」

「だな。飯食ってから歩きっぱなしだ」


ヨゾラがリュックのサイドポケットにいれていた水筒を取り出して水分補給をする傍らで、私は胸ポケットに入れていた地図を広げた。

目印もない場所を連絡機もなしに歩いてきた私たちは、この地図もたまたま人から貰ったものだけれど、市街地に入ってからは命綱とも言えるぐらいに頼りきっていた。その命綱も何度も広げては折り畳み、ポケットに出し入れしたせいで端がすり減り、折れ曲がっていた。


「今、この辺だよね」


奇跡的に崩壊を免れている講堂を通りすぎたところで靴紐がほどけたので、地図で講堂を探せば私たちの居場所もおおよそ分かった。なにぶん建物が密集している場所だから、私たちがベンチ代わりにしているコンクリートや瓦礫の山がまだしばらくは続くだろう。


「しかし、ここらへんの損傷は激しいな。何でこんなに壊れてんだか。他の地域だってもうちょっとビルは残ってたろ」

「攻撃が酷かったとも聞いていたけど、建物の強度が足りなかったのかもね」

「古い町並みが残ってたんだっけ?」

「確かね。こんなコンクリートもあるけど」


ぽん、と座っているコンクリートを叩く。


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