レベッカの涙 ※未完
お題:恋の女 制限時間:30分 文字数:883字
世界に魔法がある限り、世界に奇跡は降り注ぎ、世界に涙が溢れるのです。
それが喜びの涙か悲しみの涙かは、魔法を持ち、魔法を使う者に委ねられています。
魔法を持たぬ人々は、魔法に苛まれ、虐げられ、死んでゆく弱い生き物としてしか生きられません。
なれば、魔法を持つ私たちは、魔法を持たぬ脆弱な人々のために魔法を使いましょう。
決して驕ってはなりません。
決して自惚れてはなりません。
決して自己満足してはなりません。
この世界に私たち魔女が生まれた理由は、悲しみに沈んでしまった世界を変えるためです。
すべては悩み苦しむ人々のために、魔法を使いましょう。
「この世界にいる魔女すべての偉大なる母、レベッカ様はそう仰られました。あなたたちはまだ魔女見習いですが、既に魔法を使う身となった以上、魔法を使うときはレベッカ様のお言葉を思いだし、誰かのために使うのですよ。決して私利私欲に使ってはなりませんからね」
「よろしいですか?」と尋ねたアラベスク先生に、私と他の魔女見習いは声を揃えて「はい!」と答えた。
ちょうどその時、講堂にチャイムが鳴った。
小さなベルが何重にも重なったような独特の響きが、講堂の高い天井から降り注ぐように響き渡る。
アラベスク先生は手にしていた分厚い魔法書を閉じて、私たちの顔を見回す。
チャイムが鳴り終わると、先生はそこで初めてキリッとつり上がった目と口元を緩ませた。
「堅苦しい挨拶はこれでおしまいです。皆さんようこそ、レベッカ魔法学院へ。私たちは今日から同じ学舎で過ごす者同士です。思いやりと感謝の心を忘れず、有意義な時間を過ごしてくださいね」
「はい!」と私たちが頷くと、アラベスク先生は満足そうに頷き、右手の人指し指をちょんと突くように軽く振った。
すると、私たちの背後にある講堂の扉が大きな音を立てて開いた。
「これから校内を案内します。着いてきなさい」
アラベスク先生が先陣を切って扉の方へ歩いていき、私たち魔女見習いは慌てて先生の背中を追った。
レベッカ魔法学院の校内は、至って平凡な校舎の外観に見合わず、とても広い。




