知らないアルパカと知っている猫 ※未完
お題:アルパカの悪役 制限時間:15分 文字数:812字
「機械と話すことには未だに慣れないな」
カタカタと音を鳴らしてキーボードを打ち、最後にエンターキーを押した。
少し間を置いて、画面に新しいメッセージがぽんと浮き上がるように現れる。
私が打ち込んだものとは違う丁寧な文章が返ってくる。
「私は決して機械とではなく、カワセミさんと話しているつもりですが、カワセミさんは違うのでしょうか?」
傍らに置いたコーヒーを一口飲んで、再びキーボードに指を滑らせる。
「いや、私もアルパカさんと話しているつもりなんだけど…」
考えながら文字を入力していると、会話のペースは落ちてしまう。
できる限り、ありのままの気持ちを伝えるしかない。
「実際にアルパカさんと顔を合わせて話しているわけじゃない。声を聞いてるわけじゃない」
どう説明したものかと考えていると「ええと、」とアルパカさんのメッセージが上がる。
立て続けに新しいメッセージが更新される。
「私がカワセミさんに生のものを届けていないからですか?」
生のもの。
確かに、私はこの画面の向こうにいる、アルパカさんのことを何も知らない。
年は私と近いらしいが、性別も声も見た目も知らない。
そしてアルパカさんも私、カワセミのことをほとんど知らない。
例えば、今私が話しているアルパカさんが人間ではなく、人工知能だと言われてしまっても否定できないぐらいには、私はアルパカさんに人間味を感じていない。
人間味。
「そうだね。人間味がないんだ、アルパカさんに」
そう打ち終えてから、これは失礼だったと思いたって慌ててメッセージを付け足す。
「別にアルパカさんが冷たいって言ってるんじゃないよ!」
「わかってますよ」とアルパカさんは猫が笑っているスタンプを添えて答えてくれた。
そういえば、アルパカさんはアルパカなんてハンドルネームを使っている割に猫が好きだな。
ときどきメッセージに添えられるスタンプは全て猫だ。




