呼吸 ※未完
お題:少女の体 制限時間:15分 文字数:493字
この子はもう助からないよ、と年取った神官さまは静かに仰った。
未だ僕の腕のなかで苦しそうにぜえぜえと呼吸している少年は、神官さまに案内されたベッドに僕が横たわらせた。
僕の後ろを黙って着いてきていた少女は、僕の前に進みでてベッドの傍らで膝まづくと胸の前でちいさな両手を組んだ。
この世に神さまなんていない、と10才には似つかわしくない目をして言い切った彼女が今この瞬間には、彼女の弟を救ってくれるよう神さまに祈る真似をすることが不思議に思えた。
いや、そもそも彼女にはこの教会すら不釣り合いな場所だっただろうに、僕が連れて来てしまっただけか。
案内してくれた神官さまは静かに部屋を出ていった。
僕らが見守っている間に少年の呼吸はどんどん弱まっていき、月並みな表現になってしまうが、最後は眠るようにして息を引き取った。
少女は、少年が死んでしまうまでずっと両手を固く組んでいたが、僕が心臓マッサージをしようとしたら、その手を解いて僕を引き留めた。
「やっと楽になったのだから」
つくづく僕よりも長生きしているような考え方をする。
もっと子どもらしくみっともなく泣き喚いたらいいのに。




