DELETE ※未完
お題:あきれた処刑人 制限時間:15分 文字数:494字
僕が語り終えると、その処刑人はひどく呆れた様子で大きなため息をついた。
大体の人は僕の話を聞くと、憤慨か憐憫のどちらかの感情を向けてきたものだけれど、処刑人の男はやけにまっ平らな心を持っていた。
いっそ白ささえ感じる。
「それで?」
話している間はどこを見ていたのかわからない、丸く大きな瞳がきょろりと動いてやっと僕を捉えた。
黒々とした瞳には温かさも冷たさも感じられない。
「人助けのために下されたのが記憶消去の刑だって?バカげてるよね、君」
処刑人は右手に持つボールペンで左手のノートをパチリと叩いた。
この処刑人はそれが癖なのか、僕がこの部屋に入ってから優に20回はノートをパチリと叩いていた。
「君はそれで満足かもしれないけれど、救われた彼女は報われないだろう?」
そんな質問は僕の耳にタコが出来るほど聞かれていて、僕は口を開くのも大儀なほど同じ答えを繰り返した。
処刑人にも、これまで答えたものと全く同じ答えを返したら、彼はへえと興味なさげに頷いた。
「ま、俺には関係ないけどけ。君と彼女が幸福だろうが不幸だろうが、俺が君に記憶消去を実行する事実は変わらない」




