砂時計の恋 ※未完
お題:理想的なキス 制限時間:15分 文字数:490字
絶望的だった。
好きな人が少しずつ壊れていく。
俺はそんな彼女がこれ以上傷つかないように何でもしてやりたかったけれど、彼女の記憶の崩落は止められない。
引っくり返された砂時計は確かに砂を落として、時間を刻んでいる。
昨日は家に帰ってきた俺を見て、おかえりと笑って出迎えてくれた。
今日は俺を見て少し考える素振りを見せて、ほんの少し目を見開き、おかえりと笑った。
俺はただいまと答えるだけだった。
隣で、何をするでもなく彼女を見守っているのは本来なら幸せでいっぱいなことなのだろう。
俺だって彼女と一緒にいられるのは嬉しい。
彼女が笑っている姿をいちばん近くでいちばん多く見られるのは俺だけだ。
それでも、度々、現実が俺たちを押し潰す。
タイムリミットは迫っているのだと定期的に思い知らされる。
彼女がやりたいことを紙にいくつも書き出したのは先月のことだと言うのに、彼女はもうそのやりたいことも、紙に書き出したことも忘れていた。
だから、俺はそれをリビングに貼り付けて、いつでも目に入るようにした。
いちばん最初。
①理想的なデートがしたい
彼女の理想はどんなだったんだろう。




