ミリオンクリア
お題:絵描きのカラス 制限時間:15分 文字数:507字
「朽ちていく…そんな…」
絶望した彼の声だけが室内に響いた。
煎じて飲めば不老不死になれるというその奇妙キテレツな植物は、僕たちの目の前であっという間に生気を失って枯れた。
穏やかな風が吹くと細かな灰になり、空気中へと散っていく。
愚かだね、と誰が呟いたのだろう。
消えていくその植物を掴もうとした彼の手は、むなしくも空を切り、やがてだらりと脱力した。
「さて、帰りますか」
リオンの言葉にそれぞれが曖昧に頷いて、彼に背を向けたとき、ぽそりと彼が呟いた。
「惜しくないのか?」
何が?と振り返って尋ねたら、偶然にも視線のあった彼の緑色の目が濁って見えた。
「不老不死だ。死なないんだ。年を取らないんだ。いつまでも好きなことができるんだ」
何故わからない!何故理解できない!
声高に叫んだ彼は切羽詰まっていたけれど、僕にはただもう煩わしくて、殴り付けてしまおうと拳を握ったらミドリが鼻で笑った。
「知りたくもないね。別れしかない人生なんて」
「どういう、ことだ」
「自分で考えたら?少なくともあんたの好きなことがだっていつか終わりが来る」
それだけのことさ、と彼女はポケットに手を入れたまま言った。




