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glasses ※未完
お題:東京の帰り道 制限時間:15分 文字数:451字
「その眼鏡似合ってるな、って、ずっと思ってた」
初めて彼女を目にした時から、彼女には彼女がかけている赤い眼鏡がおそろしく似合っているなと思っていた。
理性的で論理的な彼女は大人しく真面目ちゃんで、三つ編みに黒縁眼鏡の三つ折靴下なんて旧式優等生スタイルが似合いそうだが、実際は違う。
日に透けると茶色っぽいショートカットと、赤い縁の眼鏡、若干短めのスカートにタイツを合わせる。
ファッションだけなら、どのクラスメイトにも負けず劣らず、だ。
彼女は眼鏡が似合っているという誉め言葉を聞くとほんの少し目を見開いて、それから言う。
「ありがとう」
学年一の頭脳を持っている彼女は非常に無口で、他人と関わろうとしない。
必要最低限の挨拶、事務的会話以外で彼女の声を聞いた者はこの学園にはいないだろう。
今この瞬間の僕を除いては。
彼女はホームルームが終われば、そそくさと教室を出ていくので、今日の今日まで彼女の帰り道がうちと同じ方向だと知らなかった。
いや、そもそも彼女が野良猫好きだとは知らなかった




