海辺の絵描き ※未完
お題:絵描きの遭難 制限時間:15分 文字数:487字
海辺の堤防に腰かけて、今日も彼は地平線から訪れる夜を待っていた。
連日連夜、居てくれたらいいなと思いながら通りがかる私の期待を裏切らず、夕暮れからじっと海を見つめている彼の姿を見るとホッとする。
「こんばんは」
背後から声をかけると、彼は振り返らずに、ああと頷いた。
珍しく黒縁の眼鏡をかけた彼の膝の上には色鉛筆と真っ白いページのクロッキー帳、隣にペットボトルの水。
まだ描きはじめていないらしい。
「今日、寒いですね」
そうだねと彼は頷くけれど、相変わらず薄着で風邪を引きそうだなと思う。
今朝はぐっと気温が下がって肌寒かった。
太陽が沈んでゆく今もまた気温は下がっているだろう、吹き付ける風が冷たい。
それ以上話すこともなくて、二人で太陽が海の向こうへ沈んでいくのをじっと見ていた。
どこかでバイクのエンジン音が近づいて、遠退いて、消えた時、不意に彼は振り返った。
眼鏡の奥の瞳はどこかいつもより優しく見える。
「飽きないよね、君も」
「え?」
「俺、あんまりお喋りじゃないし。描き始めたら返事なんて出来ないし」
確かに彼はひとたび鉛筆を動かしはじめると、




