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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
158/250

COLOR ※未完

お題:彼の爆発 制限時間:15分 文字数:640字


空虚だった。

色がなくて、味気がなくて、温度がなくて、夢も面白味も悲しみもない。

空っぽの、ただそこに在るだけの世界。


僕がいつ死ぬのかはわからないけれど、きっと最期までその世界に閉じ籠っているしかないと思っていた。

それでいいと思っていた。

僕は一人ぼっち。何の力も持たない人間。

現状を何も変えられない。


「だから、最初から。君と出会ってから全てが新鮮だった」


モノクロの無味無臭な世界にある日突然彼女はやってきた。

彼女は僕の知らないものばかり持っていて、それを見せびらかすのではなく僕にも体験させてくれた。

楽しいね!と笑い、苦しいねと泣き、彼女は僕の世界に色を付けていく。

夕暮れの太陽の色、寄せては引く海の色、鼻をくすぐる新緑の広がる草原の色。

どれもこれも、あの家に一人で暮らしていた時には見つけられなかったばかりだ。


「君は、君を、何の力も持たないと言うけれど、それは違う」


一緒に食べたもの、一緒に行ったところ、一緒に見たもの、一緒に戦ったもの、その全て。


「君は、僕に与えてくれた。こんなにも世界は醜くて、美しくて、暗くて、明るい場所なんだって」


君は僕の手を引っ張って、あそこから僕を連れ出してくれた。

救ってくれた。


「君はあの日確かに僕を助けてくれたんだよ」


ぼろぼろと泣き出した彼女の手を握る。


「人は温かいんだって、教えてくれた」


誰かから聞いた話、本で読んだ話。

それらの色や形や温度を与えてくれた君がどうして無力だと言える?


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