アマンダの日記 ※未完
お題:殺された小説 制限時間:15分 文字数:515字
「ほら、これ」
彼女は事件現場をうろうろしていたかと思うと床に落ちていた本を拾って、僕に手渡した。
その本は表紙が赤く、辞書ほどに分厚かったが、それ以上に目をひくものがある。
「なんだ?」
思わず呟いてしまったのは、その本に刃物を突き立てたような深い切り込みがあったせいだ。
ぱらぱらとページをまくると、表紙から本の中ほどまで切り込みが入っている。
「被害者が加害者の攻撃をかわそうとして咄嗟に」
近くにあった本を盾にした、ってことか。
そう呟くと、室内を移動して窓ガラスをじろじろ見ていた彼女が鼻で笑った。
「阿呆。被害者は華奢な女性だぞ。そんな重たい本を咄嗟に片手で掴んで敵の攻撃をかわせると思うのか?」
「それは…火事場の馬鹿力とか」
答えながらそれはちょっと無理があるなと思った。
被害者と同じぐらいの背格好である彼女はこの本を重そうに拾って、手渡すときは両手だった。
「じゃあ何でこの本にこんな傷が?」
「さあな」
彼女は僕の元へやって来ると、僕からその本を両手で受け取った。
「ちなみにお前はこの本を読んだことはあるか?」
「いえ、ありませんけれど…カンジョウさんは読んだことが?」
「そのむかし」




