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飛行機雲の遠く ※未完
お題:やわらかい悲しみ 制限時間:15分 文字数:458字
「いつもさあ、私を認めてくれなかったよ」
彼女は外を眺めながら言った。
青い空には一本の飛行機雲がどこまでもまっすぐに伸びている。
青々とした緑が風に揺れている。
主語はたぶん意図的に省かれたのだろうけど、僕にはそれが誰のことを指しているのかわかった。
「姉ちゃんは何でもできたんだよ。勉強も運動も芸術も何だって。見た目だってあの人そっくりに綺麗で。きっとさ、姉ちゃんが後に生まれる私の能力まで持っていって生まれたんだって思うよ」
彼女の姉と言う人とは直接話したことがない。
いつぞやの集まりで遠くにいるのを見かけた程度だけれど、それでも彼女の姉の美しさは一線を画していた。
凛と伸びた背筋から頭が良さそう、優しそう、しっかりしていそうと言う印象を受けたのだ。
確かに彼女は勉強も運動も芸術も苦手だった。
テストの成績は散々だし、走るのだって遅いし、絵も音楽もめちゃくちゃな表現だった。
「才能ない人が努力したって無駄なんだよね。だって才能ある人だって努力してるもん。努力なんかじゃ一生、差は埋まらないよ」




