138/250
夜風に紛れて
お題:真実の善 制限時間:15分 文字数:316字
待ち合わせの時間は21時、場所は海辺の展望デッキ。
夜景が美しいことで有名なものだから、私以外に周りは若いカップルばかりだった。
いつもどおり5分前に来るんじゃなかった。
ため息の代わりに吹かしていたタバコの煙を吐き出す。
夜風に乗って煙は雲散霧消していく。
赤いドレスとヒール、サングラスにタバコの女が一人ってのはけっこう目を引くらしい。
待ち人は時刻ぴったりに現れた。
彼はいつも5分前にはスーツのポケットに手をつっこんで、気だるそうに人を待っているものだから、今日は珍しいことだった。
「おまたせ」
「初めから別の場所で待ち合わせるべきだったわ」
「いやあ、別の用件があってここじゃないと難しかったんだよ」
「どうだか」




