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チョコレートを食べながら  作者: 藍沢凪
133/250

アクアリウム ※未完

お題:マンネリな微笑み 必須要素:キノコ 制限時間:30分 文字数:843字


「やあ」

「お待たせ」


待ち合わせ場所の喫茶店に着くと彼女は既に席に座ってブラックコーヒーを飲んでいた。僕は彼女の向かいに腰掛け、案内してくれた店員にお冷やを注文する。


「待ってないよ。私もちょっと遅刻ぎみだったんだ。お昼食べた?」

「実はまだ」

「良かった。私もまだなんだよね、一緒に食べよ」


彼女はテーブルの脇に立て掛けられていたメニューを取り出して開いた。パスタやオムライスといった料理が写真つきで紹介されていて目移りする。お勧めはキノコのシチューだよと彼女は一番人気のメニューを指差した。じゃあそれでと言うと、彼女はお冷やを運んできた店員にキノコのシチューを二人前頼んだ。


「で?今日はどこに行くの」


お冷やと共に運ばれてきたおしぼりで手を拭きながら聞くと彼女はにんまりと笑う。


「○○水族館。行ったことある?」

「小さい頃に何度か」


最寄り駅から電車で30分ほどの所にある、それほど大きくはない水族館だ。僕らが生まれる何十年も前から存在していて、アミューズメントの少ない僕らの地元で遊ぶ場所の候補に必ず入る。

「私、実は行ったことないんだよね。近いのに」

「名所は近いと行かないもんだよ」

「知ってる?あの水族館、カップルで行くと別れるんだって」

「へえ、初めて聞いた」


まあ、僕らはそういう関係じゃないので気にすることはないけれど。彼女はうーんと首を傾げる。


「なんで別れるんだろうね。水族館ってロマンチックじゃない?館内は薄暗くてムードが盛り上がりそうなのに」

「そうでもないよ。休日だったら家族づれで騒がしいし、大体カップルで魚を見て特に会話することもないだろ」

「そういうもの?」

「そういうもの」

「鮪を見て美味しそうとかカニを見て身が詰まってそうとか」

「その感想はセンスがない」


実益を重視する彼女らしい感想だとは思うが、そんな言葉を彼女からかけられた彼氏はどうやって気持ちを盛り上げるのか。鮪を見ても刺身しか思い浮かばなくなりそうだ。


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