2分の1
お題:くだらない諦め 制限時間:15分 文字数:539字
くだらない、と吐き捨てた彼は手にしていた書類の束をばさりと机に落とした。
「結局、あんだけメチャクチャしといてハデな兄弟喧嘩だったてーの?」
「まあ…あれで一応反省していますし」
「反省ねえ?」
兄弟喧嘩を起こした当人たちは僕らの後ろでガツガツと昼飯の牛丼を食べている。
兄弟で殴りあって、どちらかが吹っ飛ばされる度に街の建造物はド派手に壊れていったと言うのに、彼ら自身はピンピンしている。
そうでもなければ、こんなに血生臭い街では生きられなかっただろうけれど。
僕の視線に気づいた兄の方が首を傾げたので、何でもないと首を振る。
「まともな食事をしてなかったらしいですよ」
「ふうん。ま、細かい所は濁しておくさ。あの兄弟を僕らが抱えているのは秘密にした方がいい」
そう言って彼は机に置かれていた別の書類を気だるそうに読み始めた。
ぶつくさ文句は言うけれども、彼はこの街の裏側で起こったいざこざの処理が上手い。
「ハチさーん。ご飯食べないのー?」
「ハチさんの分も食べていいー?」
振り返ると兄の方が僕の分の牛丼を手にしていた。
「今食べるから、勝手に食おうとするな、兄の方」
「俺、ロクって名前があるんだけど」
「僕はサン」
「はいはい。とりあえずその牛丼寄越せ」




