120/250
震える
お題:群馬の狙撃手 制限時間:15分 文字数:436字
両手がぶるぶると震える。
手に持った銃の照準が合わない。
頬を一滴の汗が伝う。
みっともない。
ここまでやって来たというのに、あと一歩だというのに、僕はどうしようもなく怯えていた。
“敵に狙いを定め、引き金を引く”
練習で何度も何度もやったことが本番になって何故できない。
構えていた銃を下ろす。敵はまだこちらに気づいていない。
静かに、深く、呼吸をする。
僕は覚悟を決めて来たつもりだった。
敵はある日突然僕らの町へやって来て全てを奪っていった。
あっという間の出来事だった。
人は銃弾に倒れ、物は盗み出され、後に残った町は僕の知っている町ではなかった。
その日から僕は敵を撃つために全てを捨てると決めた。
人知れず鍛練を重ね、偶然出会った教官に拾ってもらってからは町の誰にも何も言わずここへやって来た。
僕はあの日から復讐心に突き動かされてここまで来た。
なのに、いざ敵を目の前にすると僕の手は震えが止まらない。冷や汗が止まらない。心拍が乱れる。
どうして。僕は。




