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メグミ ※未完
お題:何かの愛人 制限時間:15分 文字数:431字
「みんな何かの愛人だと思うわけよ」
赤いマニキュアが目立つ細長い指で長くなったタバコの灰を灰皿に落としてメグミが言った。この女にはつくづくこういう仕草が似合う。愛人、と私が口の中で繰り返す。
「本命なんてほんの一握りもいいところ。小指の先どころか1mmぐらいなのよ」
「私も少ないっちゃあ少ないとは思っているけど」
「世の中どんだけの人間が浮気と不倫してるんだろうね。私は聞き飽きたわ」
「類は友を呼んでるんでしょ」
違いないとニヒルに笑うメグミ。久しぶりに会ったけれど、ちっとも変わっていない。毎日のようにこのバーの片隅で飲んで、将来の夢とかうまくいかない現実とか顔も思い出せない同級生の近況とかを語り合っていたあの頃のままだ。
メグミの吐いたタバコの煙が薄暗い照明の下で細く揺らめく。私は手元のカクテルを飲み干した。マスターにお代わりを頼む。
「だいたいがキープで、心の中ではもっと素敵な人との運命的な出会いを求めてる。最終的には現実的な選択をするくせにね」




