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荒れた部屋にて
お題:贖罪の別居 制限時間:15分 文字数:442字
彼女に何かしらの罪悪感があってくれれば、こんなことにはならなかったのだ。贖罪なんて難しい言葉を彼女が知っているかどうかわからないけれど、彼女が贖罪してくれればそれで終わった話かもしれないのに、全てから逃げ出した彼女のおかげで事態はより悪い方向へと進みつつある。全く。ちょうど隣で盛大なため息が吐き出された。
「ため息をつきたいのは俺の方だ」
懐から取り出したタバコに火をつけ、隣に立っている友人Aに言う。Aは不気味にニヤリと笑う。
「気分はどうよ」
「最悪」
「だろうね」
Aは昔から他人の不幸が愉快でたまらないという、いけすかない野郎だ。そんなヤツとかれこれ5年近い付き合いをしている俺もどうかと思うが。
「いい気味だ」
「性格悪い」
「上等」
贖罪の気持ちを微塵も持ち合わせていない彼女と他人の不幸で人生を楽しんでいるA。縁結びの神はどこにいるのか。
理不尽にキレた彼女によって荒らされた部屋を片付けたら近所の行き付けの居酒屋へ行って朝まで飲もう。きっとビールが死ぬほどうまい。




