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それと僕
お題:臆病な闇 制限時間:15分 文字数:410字
目を閉じ、20秒数えて、再び目を開く。先ほどまでは漆黒の闇が広がっていたけれど、暗闇に慣れた目は部屋の内部を確認できた。子ども用の机と椅子、古そうなタンス、ぎっしり詰まった本棚。
そして、本棚の影に小さくうずくまるもの。
それは三角座りをして顔を膝に埋めていた。寸胴な胴体と小さく丸い手足。頭部には角が2本生えている。それは見たことがない生き物だった。体全体がかなり濃く深い色合いらしく、闇と同化しそうだった。ぶるぶると小刻みに震えていて、怯えているようだ。
「あの、」
僕の声にそれは顔を上げた。それは目と口が小さくて案外かわいらしかった。震えが止まり、じーっと僕を見ている。
「ここから、一緒に、出ましょう」
そう言うとそれは目をぱちぱちと瞬かせた。
『ここ、から、いっしょ、に、でま、しょう』
それはロボットのようにぎこちなく僕の言葉を繰り返すと立ち上がった。大きさは僕の膝ぐらい。
『でま、しょう』




