原稿用紙に向かいまして ※未完
お題:裏切りの小説訓練 制限時間:15分 文字数:475字
個性的な登場人物、パッと目を惹くような擬音語、機知に富んだユーモア、張り巡らされた綿密な伏線、感情移入しやすいフランクさ。
僕は改めて自分で書いた文章を読んでため息をついた。登場人物は冴えないし、物事が淡々と進んで面白味も深みもない。僕は手にしていた原稿用紙をビリビリに破いて足元のゴミ箱へ捨てた。
僕にはおよそ小説家に必要とされる力はない。けれど、幼い頃から空想するのが大好きだった。ヒーローはこんなヤツでヒロインはこんな子で…と、とりとめもなくキャラクターを考えてはノートに設定を書きなぐった。
どこかで見たことがあるような勧善懲悪のストーリーを好んだ。ヒーローはどこまでもヒーローで、悪役はどこまでも悪役。昨今じゃ、ヒーローの悪い1面や悪役が悪役たらん悲しい理由が描かれた話も増えてきた。けれど、僕はそんなじゃなく、悪いことをしたヤツが懲らしめられるというそれだけの話が好きだった。
新しい原稿用紙を引き出しから取り出して机の上に置き、ペンを持った。けれど、頭にはものイメージが湧いてこない。最初の1マス目すら埋められず、ペンをもて余す。




