暗いと噂のあいつ
お題:黒いあいつ 必須要素:手帳 制限時間:15分 文字数:495字
あいつは何かというと手帳にメモ書きをしていた。大体は言われたこと聞いたことを忘れないためと言っていたけれど、時には一人でも手帳を開いて何かを書いていた。あいつとたまに話すようになった頃の俺が一度、どんなこと書いてんの?見せてよと言ったとき、見たら絶交と言われるほど頑なに断られた。あいつとどんどん打ち解けて昼休みを一緒に過ごすようになってからやっと、手帳に自作小説のヒントになりそうなことを書いていると教えてくれた。そりゃ教えたくないよな。
同級生からは暗いと評価されるあいつは、自分でも自分のことを暗いと認めていた。人の目を見るのが苦手で、ボソボソと話し、大勢の前では自分の意見はひとつも言えない。休み時間は手帳を書いているか、読書しているか、寝ているかのどれかだ。俺以外のクラスメイトと話しているのは見たことがない。
けれど、俺はあいつが暗いとは思わない。本の話をしているときは楽しそうに感想を言うし、貸した教科書にお礼と落書きをするし、帰り道に買い食いするし、一緒にいればなんら普通の同級生だ。あいつを知らないから暗いと決めつけてしまうんだ。あいつと仲良くなってからちょっと反省した。




