表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

誤解


 あの後、橘さんの誤解を解く事は出来なかった。何度か話かけようとは試みたが、俺の顔を見るなり、そそくさと走っていってしまう。そりゃ、ロリ好きの変態とは関わりたくないよな……。でも俺は諦めないぞ‼ ここで諦めたら、高校生活が終わったのと同じだからな。明日、絶対に誤解を解いてやる‼

 っとまぁ、勝手に頭の中で宣言している間に、特売の行われるスーパーについた。そこには、目をギラギラと輝かせ、戦闘態勢に入っているオバサン達が居た。これは、ただの特売じゃない。特売と言う名の戦争だ。

 そこに居るだけでも、威圧感で押しつぶされてしまいそうだ。

 っ⁉ なっ、なんだ、この威圧感は⁉

 そこに居るどのオバサンよりも、圧倒的な威圧感を放つ人がいる。オバサン達もそれに気付いたのか、その人を見るなり口々にこう言う。特売の鬼と。

 そして、その特売の鬼は徐々に俺へと近づいて来る。

 特売の鬼。一体どんな奴なんだ⁉

 そして、とうとう姿が見える距離までやって来た。

 身長は俺と同じくらいか少し低いくらいで、歳はあまりとっていない。っというか、俺と同い年ぐらいだ。しかも、俺と同じ高校のセーラー服を着ている。同じ学校に特売の鬼が居たなんて。そう思い顔を確認すると、それはまさかの橘詩音だった。


「あっ、谷本君‼」


こんなか弱くてお嬢様みたいな子が特売の鬼だなんて……。


「谷本君は、どうしてここに居るの?」


「いっ、いや、今日特売だって聞いたから……」


学校と通学路以外で橘さんと会うなんて初めてだ。なんだか新鮮で恥ずかしい。


「だったら、気を付けた方が良いよ。ここの特売、他と違って激しいから」


「えっ……?」


その時、スーパー内に大きな音で放送がかかる。


『只今より、牛挽肉100% 200g 30円 50パックの販売を開始します』


その放送と共に、オバサン達が挽肉目指して走り出す。突き飛ばしたり、後ろから引っ張られたりと、まともに真っ直ぐ走れない。

 橘さんは⁉

 さすがの特売の鬼も、この状況は厳しいのでは……。 

 なんて考えは甘かった。


「そらそら、どいて下さーい。危ないですよー」


たっ、楽しんでる⁉ この状況下を楽しんでる⁉ さすが、特売の鬼。次々とオバサンを掻き分けて行き、いつの間にか先頭に立っていた。




あの後も、結局まともに動く事が、出来ずに結局獲得出来たのが、シラス。玉子1パック12個入り1個。長ネギ。白菜の4つだけ。やっぱり、素人が戦場に行くのは無理があったか……。

 

「谷本君。どうだった?」


戦い終わりの橘さんが、額の汗を拭いながら話かけてくる。


「見ての通りサッパリですよ……。まだ、玉子が取れただけましかな。橘さんは?」


橘さんのかごを見てみると、今日行われた特売品が全て入っていた。さすがだ……。


「はい、これ」


そう言って橘さんが渡してくれたのは、今日行われた特売品だった。


「これって……」


「谷本君、今日特売初めてみたいだったから、私が代わりに取っておいたの」


なんて優しい人なんだ……。俺の家族にも、こんな優しさが欲しい……。

 俺は、橘さんの行為に甘え、商品を受け取る。


「あっ……、あのさ、橘さん。実は学校での事なんだけど……」


今だ。今しか誤解を解くチャンスはない。勇気を出せ、谷本圭一‼


「ごめんなさい‼」


「……えっ⁉」


なんで俺、橘さんに謝られてるんだ? 


「学校での事って、谷本君の事だよね……?」


「えっ……、あっ……、うん」


「私、驚いちゃって教室出て行っちゃったんだけど、よくよく考えてみたら、谷本君はそんな人じゃないって分かって……。だから、謝りたくて……」


「謝るだなんて……。でも、誤解が解けて良かったよ」


良かった。本当に良かった。高校生活をまだまだ楽しめられそうだよ。


「谷本君、来週もまた来るの?」


「来週?」


「うん。ここって、毎週木曜日に特売してるんだよ」


「そうだったんだ……」


来週かぁ……。これからは、食費を少しでも抑えたいしな。それに、橘さんと会えるんなら。


「じ、じゃあ、また来週も来よっかな」


「それじゃあ、来週は一緒に特売品沢山取れるように頑張ろうね」


「おう。橘さんに負けないように頑張るよ」


こうして、橘さんの誤解が解けたと共に、学校外で橘さんと会う約束までしてしまった。

 久しぶりの幸せのような気がする。この幸せがいつまでも続けば良いな。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ