ふぁっといずでぃす2
引き続きアクセスありがとうございます。
ロボットには独特の臭いがあった。
どこかで嗅いだことのある臭いだと思った。懐かしい感じがする。
そうかこれは田舎の木製電柱の臭いだ、と気づく。
とすればコールタールだろうか?
最新なのにヘンなの。
表面になにかの粉が吹きつけられていて、つや消しの黒みたいになってる。
もしかしたらステルス機みたいなものかもしれない。
え! なになに! そしたらこれは戦闘用かい?
またテンションが上がる。
両腕は長くて逞しくて、石の柱みたいだ。
なるほど、これで殴られたら戦車だって吹っ飛ぶんじゃなかろうか。
だけどこの脚はどうだろう?
短くてガニ股だ。機動性は良さそうに見えない。
それに顔も付いてない。
センスがない。
「聞こえないのか! どかなければ踏み潰す!」
頭上から怒鳴られた。
相田は首をすくめる。
すごい剣幕だが、本当にそんなことできるはずはない。
ハッタリもハッタリ。無抵抗の高校生を殺すなんて、社会的に許される行為ではない。
自信をつけて、相田は相手を見上げる。
若い女性だった。目鼻立ちのはっきりした美人さんだ。
余計に気が大きくなって、
「これがなにか教えてくれないんですか!?」
怒鳴り返した。
女性は困惑した表情で、
「なにって……? 見てわからないか!」
逆に聞き返してきた。
「わかりますよ! ロボットでしょ!?」
「……なんだって!?」
「ロボットですよ! ロボット!」
女性は眉をひそめ、ロボットの後ろに顔を引っ込めた。
『ロボットとはなんだ?』
そんな声が聞こえてくる。
ロボットを知らないのか。
そんなことより、気がついたことがある。ロボットはエンジン音もない。非常に静かだ。だから声が聞こえる。
立ち止まるとエンジンも止まるのかもしれない。
しかし、歩いている時も地面を引きずる音以外は聞こえなかった気がする。驚くべき静音性だ。
『知りやせんぜ』
野太い男の声。
他にも誰かいるらしい。
て言うか、そいつもロボットを知らないのか。
女性が一旦顔を出し、。
「訳のわからないことを言うな! 今すぐそこをどけ! 本当に踏み潰す!」
言ってまた引っ込んでしまった。
「やれるもんなら……!」
相田が言い返す途中で、ロボットが本当に前進を始めた。
上がった右足が、突っ込んできて
「うがっ!」
相田は蹴られた。
速度はゆっくりだった。寸前で止まるだろうと思ったから相田は避けなかった。
だから蹴られた衝撃自体は大したことはない。蹴られたと言うより、押された、もしくはすくい上げられた感じ。
相田は土の上をゴロゴロと転がった。
痛みよりも、怒りが勝った。
「う、訴えますよ!」
上体をだけ起こして怒鳴ったが、ロボットが前進を止める様子はない。
マジで踏み潰される!
焦ってロボットの進路から逃げ出す。
森の方へと、両手両足をみっともなく、バタバタとかいて。