ゲートクラヴィオ2
舌の上でトロンが僅かに蠢いているのを感じた。
口腔内が引っ張られるような感覚。口に広がったトロンが、一箇所に集まるおぞましい感触。
こいつ、生きてる!?
相田は一個に寄り集まったトロンをベっと外へ吐き出す。
それでもまだ足りない気がして、何度も唇で舌をしごき、何度も唾を吐く。
後方でバッツェがゲラゲラと品なく笑う。
「どうだ? 甘かっただろ?」
「何なんですかこれ!?」
「だからトロンだよ」
「そんなこと分かってますよ!」
「いや、飲み込んじまわなくって良かったな」
「は?」
「トロンは甘いけど食っちゃいけねぇぜ」
「な、なんでですか!?」
食っちゃいけない理由も、それを食わそうとした理由も。
「トロンは肉食だからな。腹に入れたら逆に食われるかも知れん」
「そ、そんなモノを!?」
「はっは! 冗談だ。あれくらいの量ならちょっと下痢するくらいだ。心配すんな」
「冗談って……」
量によってはやっぱり食っちゃいけないのか。
「分かりやすかっただろ?」
「なにがです!?」
殺されかけたのかと思うと怒りが収まらず、相田は怒鳴るように聞いた。
バッツェは相田に睨まれても意に介せず、
「トロンはこんな見た目でもちゃんと生きてんだ。そんで、別れてもまた集まろうとする習性があるってことだ。不思議だろ?」
「不思議ですよ!」
バッツェの神経もだ。