表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

ふぁっといずでぃす13

「全っ然!」

 ルキノと呼ばれた女性がきっぱりと答えた。

 腰に手をあてた姿が地面に影として映る。

「あなたの所業ですか?」

「所業とはヒドイな。まるで僕が悪人みたいだ」

「善人ではないのでしょう?」

「まぁね。しかし驚くなかれ、この状況はなんと僕の善意から発展したのだよ」

「どういった善意ですか?」

「彼、この破廉恥な少年はね――」

 破廉恥な少年、というのは

「俺のことですか!?」

「そうだよ」

「くぅっ」

「テメーは少し黙ってろ! 先生がお話をしてくださるってんだ! それをお嬢がお聞きになって、テメーの処遇をお決めになるってこった! それまで神妙にしてろガキ! いい加減そっから手を離して正座しろ! そして――」

「バッツェも黙りなさい」

「ガッテンで!」

「……話していいかな?」

「えぇ、どうぞ」

 ルキノが促す。

「彼はとある名家のご子息でね、とある事情で以て出奔したのだそうだ。ご覧の通り着の身着のまま逃れて来たらしくて、お金もないし寝るところもない。世間知らずで体力もない。放っておくわけにはいかないだろ? だからこうして拾い上げたというわけさ」

 顔に血を溜めながら相田が声を上げる。

「ニネルさん!」

「なんだい?」

「そういう設定で行くんですね!?」

「うん。理解してるなら『設定』とか言わない方がいいと思うよ」

「言いません! もう言いません!」

「あはは」

「なんです!? なにを笑ってるんです!?」

「キミがなんか言うたびにケツ肉がパクパクして、お尻と話してるみたいだ」

「本当ですか!?」

「あはははは」

 下らない事で笑い過ぎ。

 他の二人はどんな顔でそれを見ているのだろうか?

 ニネルがちゃんとしてくれないと、相田はこの場で放り出されるかも知れないのだ。

 地面を見ている相田には周囲の雰囲気が分からない。とりあえずルキノの影はほぼ無反応だ。

「そういうわけだからルキノ君、よろしく頼むよ」

 頼む側の人間とは思えない軽さ。

「バッツェ君も。さぁ彼を放してあげなさい」

「しかし……」

 当然のようにバッツェは難色を示している。

「これは――」

 ルキノの影は頭を掻いて、

「我々にとって不利益になるようなことではない、と言い切れますか?」

 静かに問うた。

 一瞬の沈黙。

「もちろんさ」

 表情は見えない。しかしニネルの声は自信に満ちていて、相田はそれを意外な気持ちで聞いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ