ふぁっといずでぃす1
アクセスありがとうございます。
大まかな設定しか考えずに書き始めているので、どうなるかわかりませんが、お付き合いいただければ幸いです。
相田俊家は生きていることが辛かった。
だからといって積極的に死にたい、というわけではない。
死ぬ時には痛い思いをするかもしれないし、自分という存在が消えるのは単純に恐ろしい。
生きているのは辛いが、死ぬほどではない、と思う。
相田は漫画が好きだ。ゲームも好きだし、ラノベも好きだ。
虚構の世界は良い。毎日楽しいイベントの連続だ。
中には辛い出来事もあるが、それを乗り越えれば、可愛い女の子とのロマンスもある。
それに比べてこの世はなんだ!?
あったりまえのことしか起こらない。
可愛い子がいても、結局彼氏がいて、なのに「彼氏とかいません」なんて嘘ついて金を巻き上げたりするのだ。
ふざけろ! ふざけるな! どっちだ!
地団駄。
ちょっと休憩してまた地団駄。
そんな世の中だから、相田は自分の人生に本気になれない。
頑張ったって、どうせ報われないのだ。
本気を出せば俺だって……。
そう思うのだが、この世にはそれだけの価値がない。
目を覚ますと同時に、相田は異変に気づいた。
森だった。
木々の間に、青い空が見えた。
落ち葉のクッションが、乾いた音をたてる。
近所の公園か?
そう思ったが、なぜ自分がそこで寝ていたのか、それがわからない。
着ているのは詰襟。
高校の制服姿で、地面に寝る。そんな趣味はなかった。
心細い。
訳も無く家に帰りたいと思った。
方角もわからないまま、木々の合間を縫って、とりあえず明るい方へと向かった。
視界が開ける。
相田は呆然と立ち尽くした。
目の前に舗装されていない土剥き出しの道。その向こうはどこまでも続く緑の丘陵地。
北海道とか、イギリスのウェールズ地方とか、たぶんそんな景色だ。
近所にこんな場所はない。
瞬間移動?
いや、どこかで気を失い、その間に誰かにここまで運ばれた、その方がいくらか現実的だ。
いずれまともな状況ではないが。
なんでこんな目に……。
途方に暮れた。
『こんな目』の正体もよくわからないし、これからどうしたら良いのかもわからない。
――そうだ、携帯。
GPSで現在地を確認出来れば、とりあえず家には帰れる。
制服のポケットを探るが、感触はなかった。
どこかで落とした。誰かに取られた可能性もある。制服姿なのに、学校鞄もないのだ。
とりあえず、目を覚ましたあの場所に戻るべきか。携帯も鞄も、そこに落ちている可能性は低いが、一応確認はしておくべきだろう。どうせ他に思いつくこともなかった。
森の奥に引き返しかけて、物音に気がついた。
ゾゾッ、ゾゾッという砂地を擦る音。遠くの方から聞こえてくる。
人工物の音だと思った。
森から飛び出し道に出た。
音のする方へ目を凝らす。
土埃を上げて、なにかがこちらに向かってくる。
それがなんであるか、相田は明言することができなかった。
多分、人の形をしている。二本足で歩いているからそう思った。
しかし人にしては不細工なフォルムだ。チンパンジーとかオランウータンなんかに似た姿勢。
表面が陽を反射させる所を見ると、金属製の鎧みたいなものを着ているらしい。
そして、おそらくデカイ。
樹木と道が作る遠近法から、おおよそ高さ5、6メートルはある、と相田は目算をつけた。
人型ロボット、じゃないのか?
目に入ったものを信用するなら、そうだ。
しかし相田の常識がそれを否定する。
最近は二足歩行のロボットをメディアで見る機会も多い。だからこそ言えるが、現実の二足歩行人型ロボットは、いま目の当たりにしている、あんな物ではない。
だからあれは人型ロボットなんかじゃない。
じゃぁ、なんだ?
わからなかった。
そうしている間にも、それはぐんぐん近づいて来て、いまや相田の視界のほとんどを埋めていた。
相田は唖然と見上げ、思考を停止させ、ただ立ち尽くしていた。
このまま踏み潰されるかもしれない、とさえ考えられなかった。
そうなる前に人型は歩みを止めた。
肩の後ろから、人が顔を出し、覗き込む。
「なにをしている! 道を空けろ!」
女の声だった。
いまの相田には、そんなことどうでもよくて、
「これは! これはなんですか!?」
興奮しながら訊いていた。
もう疑うべくもない。
これはまだメディアにも紹介されていない、最新の人型有人二足歩行ロボットだ!