0021.夏の空に
誰もいない昼下がりの校舎裏 壁にもたれかかって
ふたりでとりとめのないことを 午後の始業のチャイムが鳴るまで話していた
短い時間しかないのだけど 毎日それが一番楽しかった
真っ青な空に白い夏の雲 その頃の記憶は 今でも脳裏に眩しく残る
また巡ってきた夏の日は 蝉の声がとても寂しく響いて
ひとりでもたれかかる壁は なぜが背中が痛い
きみがいなくなってから 半年以上が経つけれど いまだに実感がわかなくて
今日はただ休みなだけで 来週になったらまた
いつも通りに会える気が いまでもしてしまう
まだ現実を受け入れられていないのは わかっている
いつまでもそうしていられないことも
ある時きみは突然 なにも話さなくなって
俯いたまま無表情で 笑顔を全く見せなくなった
うつろな目にはなにも 映っていないように見えた
やがて開いたきみの口からこぼれた言葉は
できることなら聞きたくないものだった
そのようなことがあることは 理解はしていたけれど
他人事か 物語の中でのことだと思っていた
きみもぼくもまだ 大人になりきれてもいないのに
あと3ヶ月しか残っていないという現実を どうやって受け入れられるのだろうか
間もなくきみは 学校にも来なくなり
はじめのうちは 見舞いに行くことができたけど
だけどかける言葉が思いつかなくて ただつくり笑顔であたりさわりのない話をするだけ
やがてそれも できなくなった
しばらくしてきみが もうこの世界から いなくなったことを知った
告別式には参列したけれど それはもう 現実だとは思いたくない場だった
そこにいた人たちはきみのことを 故人と言っていた
きみの笑顔の写真を 遺影と言っていた
ひつぎの中のきみはもう 二度と目を覚さないことを
頭では理解をしていたけれど 心では理解できなかった
きみの遺体に花を一輪ずつ添えるぼくは 自分がやっていることがなんなのか
わかる気がしなかった
もしもこの世界に 霊や魂というものが 存在するのなら
きっときみは天国に行く前に ぼくに会いに来てくれるに違いない
部屋の明かりを消した夜のベッドの中で ぼくは何日もきみが来てくれるのを待っていた
馬鹿げた話なのはわかっているけど だけどそう信じたかった
きみに再び会えたのは 夢の中だけだった
笑顔のきみは 夏の空のように眩しくて ぼくはうれしくて
残酷な朝が来ないことを ただ祈っていた




