0020.教科書に挟まれた記憶
古い教科書の間に挟まれた きみの手紙を見つけた
「バレンタインおめでとう!!」なんて なんなのこの言い回し
何年ぶりかに思い出した 微妙だったけどそれでもうれしかった冬の日のこと
きみは笑顔でからかうように ぼくに贈り物をしてくれたけど
どう振る舞えばいいのかわからなくて 冷めた態度をとってしまっていた
でもあれは嫌だったのではなくて 戸惑っていただけなのだけど
たくさんの人がいる中で きみはなぜかぼくを選んでくれた
それがとても不思議で 素直に受け止められなかった
もっと他にいい奴がいるだろうに そんなことを考えていた
それでもきみといる時間は 特別なものになっていった
ぼくを睨んで叫ぶきみに もう一緒にはいられないと ぼくは言った
会わなくなって 気が楽にはなった
後になって思い出すのは あの時のきみは確かに怒ってはいたけれど
もっと自分を気にかけて欲しかったと きみはそう言っていた
どうしてもっと 恋人らしいことをしてくれないの
確かきみはそんなことも言っていた
きみはぼくを好きでいてくれて ふたりの時間をもっと大切にしたいと 思ってくれていた
それなのにぼくは きみの気持ちに向き合えなくて それを拒んでしまっていた
なぜそんなことをしていたのか いまになってわかるのは 自分に自信がなかったからなのか
自分の勝手な卑屈さが きみを傷つけてしまっていたことに
大切なものを失ってしまうことに 後悔と自己嫌悪しか残さないことに
どうしてもっと早く 気づけなかったのだろう
あの日のきみは なぜかぼくを選んでくれた
だけどもう古い教科書の 間に挟まれた記憶は遥かに遠い
きみの期待に応えられなかった あのころの未熟さに この歳になって気づくけど
もっと早く気づくことができていれば きっともっときみを喜ばせてあげることができただろうに
後悔というのはしてから気づくもの そこから学ぶことはあるだろうけど
もう戻らない時間の彼方に置き忘れてきたものは いつまでも心を締めつける




