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五十二話 領地候補地


 冬季休暇も終盤に差し掛かった。そろそろ領地候補地を設定する。特別に国内地図を借りて、領地の選定をする。




 既に誰かの領地になっている地域は赤で、国営の村や街は青で、使用禁止又は居住禁止区域は黄色で着色されている。荒野とかの人が居住していない区域だと白。三つくらい挙げてほしいとのこと。


 時短するため、地図タップ転移で見ていく。

 まずは一区画目。ほんとの荒野。浅く雪は積もっているものの、中途半端な気温のせいでべちゃべちゃだ。


 次。海辺だ。海は魚介類以外正直使わない。保留。


 次。今度は山の麓だった。かなり気温が低く、雪もフワフワだ。山の上からは川が流れていて、雪解け水とかもあるなら、寒い地域で栽培できる作物がよく育ちそうだ。


 作物が育つかどうかは夏の気温や年平均気温、降水量次第ではあるが、それは聞けば良い話。山は程よく高く、麓は平ら。ラ・モールの森にもすぐに行ける。とても条件が良いのでは?



 南は王都、西は海、北は山、東は森。良いとこしかない。よし、報告に行こう。



「ライゼン様、希望が決まりました。第一希望はここです。で、第二は少し迷いましたがこっちで。第三はここですが、条件があまり良くないので最終手段です」


「なぜここに?」

「第一希望は、高低差があり、東側にラ・モールの森があること、西に行けば漁業ができることを挙げます。第二は先程も言ったように、漁業目当てですが、山や森がありません。第三は、山も森も海もないです。あれは……道候補ですね」



「ではこの二区画をペリペドット領としよう。漁業だと、あそこでは蟹が水揚げできる。貴族の間で広く親しまれているから金になる。が、乱獲すると絶滅するから気を付けてくれ。今まで存在は確認していたが、あまりの寒さに発達せず、他国からの輸入に頼っているのが現状だ。気温としては冬はマイナス十度を下回り、夏は三十度まで上がる。夏は王都に比べてそこまで暑くはならないし、適度に雨も降るから作物栽培には丁度良いはずだ」


「二区画もですか?」

「ああ、どうせ貰ってくれと言っても誰も貰わん区域だ。問題ない」



 こんなに条件良い土地なのに、皆要らないなんて勿体ない。弱点は、冬の寒さだけ。逆言えば、冬以外は王都よりも過ごしやすい、ということだ。

 農業、漁業、林業。一次産業の雇用あり、建築雇用あり、公共事業管理雇用あり、研究事業雇用もあり。最高の土地だな。



「では、ありがたく頂きますね」


「ヘルガさん、決まりました。結構北の方に良い土地があったんです」

「そうなんですね。じゃあ卒業したら取り掛かりですか?」


「今から街と建築物の設計図は作っておこうと思います。それと、建築関係の求人も出さないと。その前に仮住居も建てないとですし、卒業してすぐに取り掛かれるようにしたいです。あと二ヶ月弱でどれだけできるかが大事ですね」

「隠居するまでなら僕も手伝います」



 まだ隠居する気だったのか……。あと五年……。意外とないぞ。まあ手伝ってくれるのはありがたいけども。


「ありがとうございます。まだまだお世話になりそうです」

「頼っていただけて嬉しいです。設計図はどうしますか?」


 そうだな……。竜ヶ丘の街の作りは参考にできそうだし、計算が面倒くさそうだからいつかお金も変えてしまいたい。金貨や銀貨の材料は勿論鉱石。

 しかし、鉱石には限りがある。代替品を使うと価格の高騰を招きかねない。フェリーチェが昔作ったっていう「円」のシステムをうちも導入したい。



 お金についてはまた別で考えていくとして、建築だ。決めたいことが沢山あるから後回しになりそう。


「まずは区画を決めて、エリアごとに分けてからですかね。竜ヶ丘の住宅街と商店街がはっきり別れているのは、観光客による地域住民の生活を考慮してのことだったらしいので、観光客向けのエリアと住民用のエリア。それと生産業エリア、公共施設エリア、公共交通機関待機エリア。最低でもここら辺は先に決めておきたいですね。後は入出国審査所と案内所も建てないと」

「まずは地図作りからですね」

「ですね」


 大変そうだな。とにかく、やらんといかん。口を動かす前に手を動かせっちゅう話だ。



 国家機密級の地図であるが、領主が区画整備のために使用するのは認められている。複写版を借りて平面図に起こし、フェリーチェの遺した設計図を参考にしながら外装、内装の立体図を描く。


 学校や医療機関、馬車の見た目まで細かく。フェリーチェの設計図を参考に作るという意味ではペリペドットと竜ヶ丘は似通った街になるだろう。だから考えた。差別化を図るにはどうすれば良いか。



 服装を変えれば良い。似てしまうのはもうしょうがないことだと思う。でも少しアレンジを加えるだけで一気に雰囲気は変わる。服のデザインも家族も加わってもらって一緒に考える。


 男性用は、着物とワイシャツを合わせたような感じとか良いんじゃないかな。

 袖は着物と違ってブレザーのようにストンとした形に、下は袴と同じようなデザイン。袴は、着物と同じくフェリーチェの国の衣装らしい。卒業式に着る人が多いとか。靴は、歩きやすいようにブーツ。



 女性用は袴だが上品さが強い竜ヶ丘とは変えて、プリーツは大きめに、袖口や裾にはフリルをあしらったりすると可愛い気がする。リボンとかも付けちゃって。着物とワンピースを合わせたような雰囲気。



 よし、これで竜ヶ丘の丸パクリは防げた。多分これじゃ寒いから冬用に何か対策も考えないと。王都に行く時用のマリアの服もデザインを変えたいし……。服だけでこんなやること多いのか? 皆はどうしてるんだろう。


 うちにはバレッタおばさんがいるからアドバイス貰えるけど、例えばアイクランド公爵家の伝統衣装とか。

 ヘンリーは王都住みだから当たり障りない、他と同じような服装だけど。今度聞いてみよう。



「アイクランドの伝統衣装? そんなのないよ」

 学園に行ったついでにヘンリーに聞くと、そんな答えが返ってきた。


「え!? ないのか?」

「ああ、国としての伝統衣装は既に廃れているだろ?」

「まあ、そうだな」


 サージスの伝統衣装ってフェリーチェのデザインした着物だよな。多分。



「貴族の中に流行はあるけど、伝統的な何かは一切ない。料理にしろ建築にしろ芸術にしろ。ハルみたいにあった方が楽しいよねって思う方が珍しいんだ」

 驚愕の事実。衣装考えるのすごい楽しいのに。勿体ない。


「まあ、自分達だけの伝統衣装を着てみたい気持ちがある奴は多いだろうけどな。個人がどうこうできる問題ではないから普及しないんだよ。安定とか無難とか、それに乗っかった方が楽だろ」



 確かに……。奇抜な衣装は賛否両論あるからな。作り手がいないっていうことも、要因ではあるだろうし。


「でも、守護者様の家が伝統衣装を出したぞ。この波に乗ってうちも作ろうって家は何軒か出そうだな」

「パーティーが賑やかになりそうだな」



 想像したら面白い。今までは男女共に同じようなデザインの服しか出回ってなかったから。その家その家の個性が出そうだ。


「その日が楽しみだ」

「だな」



 素材も資料収集で決まったしデザインも決まった。竜ヶ丘からの技術支援もある。服に関しては心配ないかな。建築物も設計図と完成図は描いたし。それじゃあ、次は何に手をつけようか。

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