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二十一話 王都中心へ


「あれ、ハルさん。その鞄どうしたんですか? 先日僕がデザインしたものによく似ているようですが……誰かからの贈り物ですか?」



 誕生日以降初、ヘルガさんと会うことになったので見知らぬ誰かから貰った誕生日プレゼントを背負っていくことにした。

 今まで使っていた肩かけ鞄は、もともと父さんのものだったからそれは返し、無限容量の部分だけを付け替えた。鞄に放り込むだけで普通の容量が無限になるのはとても便利。もう手放せない。



「朝起きたら誕生日おめでとうのメッセージと一緒に届いていたんです。誰がくれたのかはわからないんですけどせっかくの贈り物なのでありがたく使わせてもらおうと思って」


「え……? 結構上質な革製ですよねこれ……貴族が学園で買う鞄と同じかそれより上、くらいでしょうか……僕は貴族だった時もこんな上質な材質の鞄見たことないですよ。一体誰が……?」




「さあ……」


 せっかく貰ったんだから使おうと思ったがよく考えたら得体の知れない人から貰った物って普通警戒するよな。俺の感覚っておかしいのか。



「まあ、ピアスが反応しないってことは何か細工されているわけではなさそうですよ。実はあの案が出てから自分も欲しいなって思っていたんです。だから誰がくれたかはわからないんですけど使おうと思います」

「ハルさんがそれで良いのなら僕はもう何も言いませんよ」



 よくわからないがどうやら今ので納得してくれたらしい。今日も再生・治癒属性の魔物を探しに行く。実験のために少なくとも二匹は生け捕りにしたい。



 暫く歩くと突然地面が揺れた。目の前の魔素湖からは黒い泡がブクブクと立っている。


「高ランクでしょうか」

「恐らくSか、それ以上でしょうね。十年以内にこんなのが大量に出てくるなんて、恐ろしい」



 俺達二人なら余裕だとしても、民間人にはDランクの魔物一匹ですら脅威だ。SSランクなど話にならないだろう。それなら今のうちに対策を考えるだけだ。何が効いて、何が効かないのか。



 出てきた魔物は胸の辺り、つまり魔石がある辺りが白く光っていた。魔石の白は再生・治癒属性を表す。つまり、満を持して漸く一匹目ゲットだ。


 だがこれが白ではなく黄色だった場合、生け捕りにするメリットは正直ない。光魔石はありがたいが本体に用はない。



「まずは腕を飛ばしてみましょうか。僕が切り落とすのでハルさんは回復傾向が見られたら無限牢獄、でしたっけ? にしまってください」

「わかりました。では、よろしくお願いします」


 ヘルガさんがパッと魔法を放った次の瞬間、目の前の魔物の腕が吹っ飛んだ。最近、ヘルガさんも無詠唱で魔法が発動できるようになった。

 無詠唱だと魔法の威力が落ちるのであの魔物を誤って殺してしまわないようにとの配慮だろう。



 俺は始めたては簡単な詠唱をしていたが、途中から面倒になって無詠唱で発動していたから今更詠唱するのは少し恥ずかしい。


 腕を吹っ飛ばされた魔物は傷口を見て一瞬、何が起こったかわからないようであったがすぐに変化は起こった。



 うんうん、ちゃんと治るな。黒い煙が上がり、腕が少しづつ再生を始めた。そこで俺が無限牢獄を発動、生け捕りに成功した。生きているかどうかは無限牢獄の中身リストをタップすることで確認ができる。現時点では生きているようだ。



 今日現れたんだからまたすぐ現れるかもしれない。そう考えた俺達はこの辺りで昼食休憩を取ることにした。

 魔物が無限に湧く魔素湖の目の前で料理を始めるのは人類史上俺達が初かもしれない。魔素湖の前で魔物を食べる、これは鶏の前で鶏卵を食べるようなものだろうか。知らんけど。まあ親は魔素湖なんだからあながち間違ってはいないか。


 何度か湧いて襲ってきた魔物もいたがそういうのはすぐに俺達の手によって魔石と化した。ついでに味もチェック。









「ん゛ーーー。不味い」

「はい、これは過去一ですね。噛めば噛むほど弾力が増して、生き物というより何かの物体を食べているような気がします。ただ、毛皮はそれなりに分厚いので上着には使えるかも知れませんね」


 熊みたいな形だったから美味しいだろうと思ったのに煮ても焼いても炙っても揚げても生でも駄目。調味料を駆使しても変わらなかった。珍味ですらないなこれは。


 俺達は口の中に残った大きな塊を無理矢理飲み込んだ。流石に吐き出すのは気持ち悪さを増幅させるだけだろうから。



 風魔法を纏わせて威力を追加したナイフで必要そうな部分だけを解体して残りは燃やし尽くした。燃やさないと魔物がそれを食べてランクアップしてしまう。そうなるとかなり面倒だ。これは実験してわかった。


 この日はそのまま森中を探したが結局見つからず、解散となってしまった。


 次の日も、その次の日も、最高レア度の魔物は見つけられなかった。












 そうして探し続けて早五年。俺は十二歳になった。学園受験前にはもう何匹か捕まえておきたかったが仕方がない。魔物料理のレパートリーと腕前だけはそこそこになったんじゃないかと自負はできる。


 マリアも正式稼働した平民学校に通うようになった。一番好きな教科を聞くとやはり言語らしい。そりゃそうだ。あのカリウ先生の授業。つまらないわけがない。



「じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい! お兄ちゃん!」

「行ってらっしゃい。いつでも帰っておいで」

「父さんと母さんは何があってもハルの味方だからな」


「ありがとう。俺、頑張ってくるよ」


 学園受験を控えた俺とヘルガさんは馬車に乗ってオブリガード公爵家の方に出発した。七歳の誕生日の時に貰った革鞄は何度も再生魔法をかけてずっと使っている。



 ヘルガさんも学校併設と同時期に同じものを貰っている。若干色が違うが、デザインはお揃いだ。学園でもこれを使うことにした。調べると、制服の購入は義務だが、鞄の購入は義務ではないらしいから。


 学園では来る魔物の襲撃に備えて数年前からラ・モールの森にて実践演習という授業が加わった。皆、ここで少しでも多くの魔物を倒し、功績を挙げて成り上がろうと必死になって臨む。位が高いに越したことはないし、その気持ちはわからんでもない。



 ただ、一部の人間は妨害行為を繰り返した挙げ句他人の手柄を横取りしたりとやりたい放題。対策はしてもこの国がクラスターで生き残るのは絶望的とも言われ始めている。

 だから俺はまずその実践演習で全員の力量を計りたい。それによって俺の立ち回りもまた変わってくるだろう。



 まず学園に受からなければそれもできないから今日は魔法の勉強ではなく普通に試験勉強をする。面接的なものはないらしいから完全な実力勝負。魔法具を研究するためにも、ルイ先生に会うためにもまずは勉強しよう。話はそれからだ。


 メアには下がってもらって一人で黙々と勉強する。ペンがカリカリと紙を滑る音が室内に響き渡る。



 この音、結構落ち着くな。あー……だんだん眠くなってきた。寝不足が祟るのは嫌だから明日の試験に備えて今日はもう寝よう。







「ハル様、ハル様、朝ですよ」

「ん゛〜〜〜〜めあぁ?」

「はい、メアです」

「んぅ……起きる……」


 翌日、俺は昨日少し夜更かししたからか、初めてメアに起こされてしまった。メアがいなければ遅刻待ったなしだっただろう。危ない。徹夜なんてしなくて良かった。たった一、二時間の夜更かしでこうなるんだから徹夜で寝落ちなんてことになっていたら試験結果は見る堪えないものになっていたはずだ。



「起こしてくれてありがとう。今日くらいは自分で起きたかったんだけど……」

「本来であればこれも私の通常業務です。ハル様はいつもお一人で済ませてしまいますのでこうやって少し寝坊していただいた方が給料と釣り合いがとれます」

「そう? なら良いけど」


 なるべく負担にはなりたくないんだけどそうか。貴族は寝坊するのも仕事なのか。ちょっと抵抗あるな。風呂と睡眠は二大無防備行為だしメアが襲撃とかするわけないけど長く魔物の中にいたせいで感覚が変わってる。


 メアもそのことは承知しているのかそれ以上この話題には触れてはこなかった。

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