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二話 魔力属性を知る


 少し歩いて着いた教会は神が言っていた程ではなかったがそれなりに廃れていた。形骸化しているのは本当だったのだろう。

 微かに神の気配がある教会に入ると神官に要件を聞かれる。彼らにも特別大きな信仰心は感じられない。これは付け入られない方が凄い。



「じゃあマリアさんはどの属性を見てほしい?」

「うーん……地属性!」


 地属性は一番多い属性だ。平民の半分はこれに該当し、逆行前の俺も地属性だった。両親は地属性の次に多い火属性だ。

 でも攻撃と防御の二つにおいて一番使いやすそうなのは強化属性。平民にはほとんどいなくて貴族、かつ騎士に多い属性だ。体そのものを強化したり魔力が強ければ物体に魔法をかけることができる。



「ハルさんはどれにしますか」

「強化属性でお願いします」

「はい、ではこちらの魔法具に手を触れてください」


 属性ごとに魔法具があり、魔法具が反応しなければその属性には適正がないことになる。後方でマリアの歓声が聞こえたから望む結果が出たようだ。

 そして俺は……



「おめでとうございます、ハルさん。強化属性、ランクは一級です」

 見事に勝ち取った。ランクで言うと一級は一番強い。五級から一級まであり、数字が小さくなるほど強くなる。神情報だと特級というのもあるがそれは守護者にのみ適応されるものらしい。

 守護者である俺がなぜその下の一級なのかははっきりしている。それは、守護者だけが魔力量を増やすことができるからだ。普通の人なら一級と出たらそれ以上の魔法は使えないし魔力も増えない。



 ただ、守護者は信仰心と努力次第で魔力量を増やすことができるので後から特級になれるということ。俺の魔力量が跳ね上がるのはまだまだ先になりそうだ。



「今日はこのまま帰りますか? それともあちらの礼拝堂でお祈りしていきますか?」

「私は良いや〜」

「俺、お祈りしたいです」


 お祈りを辞退した三人は教会の外に出て軽食を食べて待つそうだ。これは……神よ、努力が必要ぞ。

 礼拝堂は人気がなく静かだった。俺と、属性を見てくれた神官見習いのヘルガさんしかいない。



「ハルさんは、ヴィーネ様を信仰しているのですか?」

「いえ、全く」

 ヘルガさんの疑問をバッサリ切った。

「え、でもお祈りって」

「少し言いたいことがあるので」


 今の俺は上手く笑えていただろうか。若干頬が引き攣っていたような気が……いや、考えるな。

 ヘルガさんは七歳の時に教会で拾われてからずっとヴィーネ神を信仰している、この国では珍しい信者だった。



 この教会が言う程汚くないのは毎日何時間もヘルガさんが清掃しているからだそう。本当の神を見せてやりたい。

 膝をついて形だけでもお祈りの体制を作る。怪しまれないように。



『神、聞いてる?』

『聞こえてるよ〜』

『あのさ、王子様っていつ襲われるの? お披露目の時って言ってたけど俺の家から近い? 王宮に近い? もし俺の家から近かったら逆行前に気づくと思うんだけど』

『うーん、結構近い。覚えてないのは当たり前だよ。呪われた本人しか邪神を覚えてないんだから』


『どういうこと?』

『邪神が記憶を操作したってことよ。破壊魔法の一種よ』

『どうやって助ければ良い? 最悪俺、騎士団に連れてかれるけど』

『邪神が記憶を消したのは登場から一日経ってからだから余程のことがない限りは無いと思うけど。倒し方はよくわからないのよね。この世界のことが通用しないかもしれないから。弱らせてくれたり隙を作ってくれたら強制的に帰せるのだけれど』



『要するに、具体的な方法については自分で考えろと』

『そゆこと、ついでに信仰心の回復もお願いね。学力はその辺の貴族と同じにしておいたし今から渡す指輪からいつでも私にコンタクト取れるから。それじゃあよろしく』



 そう言って神は消えた。相変わらず怠惰な神だ。

 目を開くと女神像が淡く光り、その光が俺の左人差し指に集中した。

「これが指輪ですか……」

 小さく呟いた俺はすっかり忘れていた。もう一人いることを。


「ハルさんって、もしかして守護者、ですか……?」

 呆気に取られていた彼が我に帰ってそう聞いてきた。



「あー……わかりますか?」

「やっぱり……良いですかハルさん。このことは他言無用ですよ。今みたいにあっさり認めたら駄目です。神の加護を得ているとわかったら貴族が黙っていませんよ。貴方だけでなく貴方の大切な人まで危険にさらすことになります。わかりましたか」



 凄い剣幕の彼に俺は黙って頷いた。ヘルガさんの言う通り、邪神を信仰している人間にとっては邪魔でしかないし、あの神を信仰している人間からしたら家族を人質にとってでも側に置いておきたい道具のひとつだ。


「俺とヘルガさんの秘密にします」

「はい。ああ、そうだ。これでは信用に欠けると思うので僕の秘密も一つ話します」

 確かに、彼を信用していないわけではないがこれでは自分だけが弱味を握られている状態だ。



「聞きます」

 なるべく重いやつじゃないのが良い。


「実は僕、貴族の子供です。家が秘密裏に邪神を信仰していて、僕は生贄に捧げられました。幸い僕は風属性準一級だったので逃げられましたが、途中で餓死しそうになってたところをここの一つ前の神官長に拾われたんです。もう亡くなってしまいましたが……」



 胃もたれしそうなほど重い話だったが事実として邪神がどの程度信仰されているかはわかった。邪神、許さん。


「守護者のハルさんに会えたのもきっとヴィーネ様のお導きだ。感謝しなきゃ」

「ヘルガさん、神様の前ですからここで誓いましょう。お互いの秘密を墓場までの秘密にすると」



「良いですね。ではヴィーネ神の名の下に、互いの秘密を話さないと誓います」

「誓います」


『良いね良いね! 若い子達の友情! 秘密の約束! キュンキュンしちゃう〜!』


 女神像が光り、そんな神の言葉と共に俺とヘルガさんの心臓には誓約がかけられた。ヴィーネ神の下で誓うとこうなる。破れば死が待つ恐ろしい誓約だ。まあ破らなければ何も恐ろしくないが。



「今、一瞬ヴィーネ様の様なお声が聞こえました。少し想像していた方とは印象が違いましたけどね」

「俺もです。キュンキュンするようなことは何もありませんが面倒事を押し付けられるよりはマシです。神も寂しいのでしょう。ヘルガさんなら呼びかけたら答えてくれると思いますよ」

「ふふ、では今まで以上にお祈りしないとですね」


 逆行後、初めての友人ができた。戸籍上は死んだ貴族の子供、ヘルガさん。秘密を共有できる唯一の人。大切にしよう。





「あ、お兄ちゃん! 遅いー! もうサンドイッチ食べ終わっちゃったよ」

「ごめんごめん。それじゃあヘルガさん、また」

「はい、またお会いしましょう」

「お友達ができたの?」

「うん、俺の属性を見てくれた見習いの。二歳しか違わないんだ」

「まあ! 大切にしなさいね」



 俺達は四人並んで笑いながら帰路に着いた。

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