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十六話 魔力付与


「ハルさまぁっ……!?」



 突然の様付けのお陰で崖っぷちに立っていた俺の精神は引き上げられた。



「それからヘルガ様も。お二人共、神獣様がお側におられると知りました。私共こそこれまでの非礼を詫びなければいけません」 


 あまりの豹変ぶりに、俺もヘルガさんもついていけていない。勿論、何も知らされていなかったレオン、シルヴィ、ヘンリーも。


 ただ、全員思っているであろう。



 “似合わねぇー”、と。


 あのライゼン様が俺に敬称と敬語を使うなんて。


「あ、あの……俺も隠していたわけですし……そのぉ……と、とにかく話し方とか今まで通りで良いです」

「いや、しかし……貴方は守護者様であらせられますし……」



 貴方がそれを言いますか。平民である俺が渋る中名前呼びをさせた貴方が。


「そうですか……。ライゼン様もセリア様も、家族ができたようで嬉しいと言ったあの時の言葉は偽りのものだったのですね……家族のようだと思っていたのは俺だけだったのですね……」

「いきなりそんな風に距離を取られてしまうなんて思ってもいませんでした……家族とは、やはりこういうものなのですね……」



 俺の狙いに気付いたヘルガさんが合わせてくれた。悲しそうに目を伏せ、涙を……



「わ、わかった! 戻す、戻すぞ!」

「そ、そうよ! 二人は私達の家族よ! 他人行儀なんておかしいわね!」


 ここまでしてやっと前の呼び方に戻してくれた。特に家族を失っているヘルガさんの言葉には重みがあったし悲壮感も段違いだった。半分以上本心だったんじゃないかと思う程に。



「二人がどれだけヴィーネ様から特別視されていたとしてもハルとヘルガの友達は何があっても俺達だからな。そこはいくらヴィーネ様とはいえ譲れない」

「ええ、お父様は周りを気にして急に態度を変えようとする人だけど、私達は二人がこういったこと苦手だって知ってるから安心して」

「俺も、今日出会ったばかりだが既に二人を好いている。何があっても友達だ」


 必死になって弁解しようとする大人をジロリと睨み、皆がそう言ってくれた。


「ありがとう……」

「俺、皆と出会えて良かったと心から思ってるよ」


 暫く皆何も言わなかった。少し感動した雰囲気になってしまった中、何かを発するのは憚られたのかもしれない。そんな空気を壊すように俺は笑顔を作った。



「俺がちゃんとした地位を得るまでは世間に明かせないけど、俺達だけの時は好きなだけこき使って良いよ。そのための全属性なんだから」


 守護者であることに胡座をかかないようにこれは常に心に留めておいている。自分はあくまでも使われるためにある存在だ。勘違いしてはいけない。


「いや、こき使うことはしない。ハルのことだからどうせ自分が自惚れないようにって口癖にしてるんだろうけど。友達をこき使うような人間だったら即縁切りするべきだ。多少の手助けは望んでも全部を押し付けたりは絶対にしない。これは王族だからとかじゃなくて、人としてだよ」


「レオン……わかった。俺は道具じゃない」

「それで良い! あ、でも魔法は教えてもらうからな! そこは覚悟しておけよ」

「覚悟するのはレオンの方じゃないか? 俺の訓練はスパルタだからな」



 何せラ・モールの森まで遠征に行くんだから。そうだ、魔石に魔力付与をすることもできるそうだから魔力枯渇ギリギリまで魔力付与させるってのもアリだな。



「さ、最初は手加減してくれよ……?」

「勿論。最初はそのつもりではいる」


 徐々に、わからないくらいに難易度を上げていけば確実に実力が着き、そのうち歴代最強の王(脳筋)が出来上がりそうだ。ニヒヒと口角が上がる。


 ただ、王族ともなると、日々の勉強もあるし中々難しい時も出てくるはずだ。凝縮するか、自主練してもらうか。それにレオンは再生・治癒属性だから常に使うって能力でもないし……。



「ぅん゛〜〜〜〜〜〜〜」

 考えてもそう簡単に出てくるものじゃない。


『神ー。へるぷ』

『ちょっとだけならハルの魔力を人間に付与できるわよ。本当にちょっとだけよ』

『わかった。ありがとう』


「レオン、手貸して」

「お、おう……」



『んー……これくらい?』

『まあそのくらいが限界ね』


 俺がレオンに付与したのは強化属性。強化属性は空間に魔法をかけて圧力で物体を潰すことができる。再生・治癒属性の練習にはもってこいだ。まあ、簡単に言えば自分で自分を治すってやつだ。


 少し緊迫感のあった方が伸びやすい。俺がそうだ。ラ・モールの森は危険だらけ。神獣達も余程のことがない限りは一切手を出してこない。



「あ、あの……今のは……?」

「どうすればレオンがその属性を上手く使えるようになるか考えた結果、ある結論に辿り着いたんだ。危機が迫った時、人は実力以上の力を行使できる。だから俺の力の一部をレオンに付与した。レオンはもう少し練習すれば強化属性が使えるよ。こんな風に」



 俺は左腕の周りに強化魔法をかけた。嫌な音と共に腕がおかしな方向に曲がる。


「痛てて……」

 骨折は何回やっても慣れないな。ヘルガさんが隣で顳顬を押さえてため息を吐いているし、メアとエステルさんも同じポーズだ。こっちは慣れていそうだ。



「「ばっ……!」」

「ちょっ…!」 


 初めて見た三人及びその他面々は驚愕に目を見開いている。



「レオン」

「わ、わかった」


 レオンが震える手で俺の腕を治療する。が、焦っているせいか苦戦しているようだ。





「ごめん……」

 結局、数十分粘ったレオンだが完治には至らなかった。俺はそれを自分で治す。


「沢山見ればそのうち慣れる。ヘルガさん達みたいに」

「ハルさん……僕は慣れたのではなく、無になったのです」



 それを慣れると言うのでは……?


「レオン、これからもっと凄いの来るから覚悟しておいた方が良い。ハルさんは痛覚があるのに平気で自分の手足を切り落とすんだ……緊張感が無いとか何とか言って……」


 当然だ。対魔物戦では仲間が見るも無惨な姿になるなんてことは起こりうるんだ。実験しつつ血に慣れないと。



「わかった。俺、頑張る。次期国王としてこういったことには慣れておく」

 その意気だ。ただでさえ数が少ない属性だっていうのに使えないなんて勿体無いからな。


「あ、もしかして強化魔法ってそれが狙いで……?」

「まあ、慣れるまではやらない方が良いと思う。擦り傷くらいでも練習にはなるから」


 下手すると俺が治すまで戻らないこともあるかもしれない。



「ハル君、頼みたいことがある」

「はい、ライゼン様。俺にできることなら何でも言ってください」

 俺の能力を知っての頼みであるなら何か深刻な問題なのかもしれない。



「五年前、魔物の群れがサージス国を襲ったのだ。ハル君はまだ一歳だっただろうから覚えていないだろうが、騎士も民間人も等しく多くの死者や怪我人を出すような大惨事になった。クラスターの前兆だと言われている」

「魔物の群れ……魔物は群を作らないはずなのになぜ……?」



 ラ・モールの森で見た魔物はどの種類でもいつも単独で行動していたので群れは作らないものだと知っている。


「森から出ると、群れる習性があったようだ。一体でも手こずるような魔物が群れを作ったせいで多くの犠牲が出た。襲撃にあった街の民間人はたった一日でほぼ全滅、生き残った僅かな騎士達も治癒師ではどうにもならない程の傷を負っている。今現在も目を覚さない。ハル君にはそんな彼らに治癒魔法をかけてほしいのだ。勿論、望むなら報酬も用意する」

「報酬はいりません。早く行きましょう」



 案内されたのは治療室と呼ばれる施設。国中から再生・治癒属性の人間が集められ、日々治療に当たっているらしいが効果は無いそうだ。


 ここは負傷者がいる場所。清潔に保っていないと駄目だから中には治療を行う俺だけが入る。



 治療を行うにあたり、傷口を見ておきたいが素人がそんなことをすると怪我人にとって何かしら不利益にはたらいてしまうかもしれない。まだ可能性の段階だが用心するに越したことはない。



 一人ひとりを見て回り、最終的には全体に弱い治癒魔法をかけて応急処置をした後に個人にあった方法を取ることにした。


 頭の内部に問題を抱えている人もいれば四肢切断など外部に問題を抱えている人もいるから


 こんな時のためにやりたくもない痛み実験をしてきたんだ。自分にかけるように展開すればきっと治せる。

 この傷は俺達国民を守る過程で負ってしまったもの。ならば守られた側は治すために尽力する義務がある。もう二度と戦うことは叶わなくてもせめて家族には会わせてあげたい。



 一旦応急処置を終わらせた。ここからは内部傷害優先で魔法をかける。内臓は繊細な部分だから慎重にやらないと。とは言いつつもやはりスピードは大事。



 臓器の構成が完璧に分かればもう少し楽にできるんだろうけど……人体構造についての本も探しておこう。



 粗方治療は終わったが、一人だけ苦戦している。魔物に直接、大量の魔素を流し込まれたのか、呪いのようなものにかかっていて上手く治癒魔法が通らない。



 無理矢理しようと思えば出来なくもないのだろうが後遺症が残るかもしれないし、半分人間半分魔物みたいな見た目になってもおかしくはない。



「神、神力って俺も使えるか? 確か魔物とか呪いに効果があるんだよな」

『使えるわよ。その治癒魔法に私の神力を混ぜたら魔物の呪い程度へっちゃらよ』


「じゃあ手伝ってくれるか? あとこの人だけなんだ。これが終わればあとは擬似心臓を埋め込むだけ」



 擬似心臓は実験の途中で生まれた。風属性の擬似心臓を作ってヘルガさんに使ったところ、あらゆる攻撃が無効になった。また、身体能力も格段に上がり、対魔物戦で有利になったのだ。



 これを騎士に使うことで重篤な怪我や病気を避けられるようになる。光属性の魔石はどの属性でもよく馴染むから大量に集めていた。


『うーん……神界からは難しいわね。ちょっと待ってて、私もそっちに行くわ』


 それを最後に通信が途絶えた、と思ったら神らしき人物が降臨した。尻尾が大量に生えている謎の動物を連れているからあれが多分神界の神獣だろう。



 神の顔、初めて見たけどほぼ幼女だな。信仰心が関係するのだろうか。邪神は大人の男だったしそうかもしれない。そんな失礼極まりないことを考えている間に神の準備が整ったようだ。



「私が神力で中和させている間に魔法をかけてちょうだい。別々でやると私の神力が無駄になっちゃうからね」

「わかった」

「じゃあいくわよ」



 神力の強さを感じながら治癒魔法をかけていく。体が凄く熱くなるから俺あまりこの方法好きじゃないかもしれない。



「うん、いけたわね。成功よ。ついでに擬似心臓にも神力を込めてあげるからちょっと貸して」

「わかった。とりあえずこれくらい」


 俺は光属性の魔石を山のように積み上げた。数は少ないが、ラ・モールの森の魔素湖からはちゃんと出る。

 光属性の魔物に絞って戦ってきたから大量に出せる。一つだけだが奥に行って仕留めたSランク魔物の魔石もある。本当に大きくて俺の握り拳四つ分ですっぽり埋まるくらいだ。



 神力が込められた魔石を対象者の胸に埋め込む。これには神力だけでなく俺が予め付与しておいた魔力も入っているから、例え傷付いたとしても即時に回復する。まあ、魔石に神力にってある時点でそんじょそこらの魔物じゃ相手にならないけど。

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