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一話 逆行

2024年1月、強制ログアウトによりアカウントに入れなくなる

パスワードを入れるものの、入れず

ログインが出来なくなったため新しく作り、投稿を再開

そのアカウントにもログイン出来なくなり、パスワードを設定し直す

初期のアカウントに舞い戻る←イマココ


荒野による機械音痴が炸裂し、再投稿です。


 なんで。

 どうして。

 どうしたら回避できた。


 そんな問いに答えてくれる人は誰もいなくて。

 俺は崩れゆく街の中一人立ち尽くすしかなかった。



 朝起きた時にはこんなことになるなんて考えてもみなかった。またいつも通り父さんの屋台の手伝いをして、友達と遊んで、食事は皆で小さいテーブル囲んで笑ってするはずだった。決して裕福じゃなかったし学だってなかった。でも、世界一幸せだった。それなのに……。

 目の前には崩れた我が家。建材の下敷きになった可愛い妹マリア、尊敬できる両親、腕の中には少し前に俺を突き飛ばした友人のラッシュ。


 その中に息のある人は誰もいない。近所のおばさんも、優しかったおじいさんも、一瞬にして全てが壊された。



 泣いたら少しは冷静になれるだろうか。いや、無駄だな。突然のことすぎて現実味がなくて、涙の一滴も流れない。腕の中の重さが、体の痛みが現実だと嫌でも思い知らせてくるのにまだ悪い夢だと思っている。


 きっと目が覚めたらまたいつも通りの日常が待っているはずだ。そう思っても目が覚めることはない。だって、これは現実なんだから。目の前に広がる光景こそが現実だ。

 大切な人は皆死んだ。自分にはもう何も残っていない。ここにいたら自分も死ねるだろうか。

 もし、過去に戻れるなら今度こそは回避したい。もう誰も失いたくない。

 全身に鈍痛を感じ、俺はそのまま意識を手放した。






『ねえ、ちょっと! そこの君! そうそう貴方よ!』

 気が付いたら見慣れた部屋のベッドの上にいた。ああ、やっぱりあれは悪い夢だ。大丈夫、あんなこと現実にあるわけない。


『ねえ、聞いてるの!』

 うるさいなあ。誰だよ。

『私は神よ! とにかく私の話しを聞いてよぉ!』



「かみ?」

 そう呟いた自分の声はえらく高かった。

『聞いて!』

「わかった。聞く。だから静かにして」

『ほんとに! やったぁ!』


 静かにと言った俺の言葉は聞こえないようで自称“神”はベラベラと話し始めた。

 この世界は自分が作った。そして初代国王を守護者、つまり神の加護を与えて自らを国教とするように要求、ヴィーネ神として信仰されていたそう。しかしここ数十年、その信仰心は徐々に失われてヴィーネ神生誕祭も形骸化、教会はツタと埃に塗れたと。



 俺もヴィーネ神の名前だけをぼんやり知っていただけだったので信仰心など無いに等しい。

 俺が情報を整理している間にも話は続く。


『それで他の世界の神に付け入る隙を与えちゃったの。他の世界に干渉するのは神界隈においては御法度だから邪神って言われてるわね。丁度信仰心も無くなってたから宗教の信仰争いに負けちゃったのよ。つまり、私よりも邪神を信仰する上層部が増えたってこと』

「はあ」


 それは完全に自分のせいではないかと思うが。自分の世界に干渉していれば信仰心は保たれたのでは。単純にこの神が怠惰なだけだったのでは。そう思う。


『ここからが重要なの。邪神がこの国の王都に急に現れて偶然その場にいた王子様を呪ったの。呪ったって言うか、乗っ取った? その子はもともと回復系の属性が適正だったんだけどそのせいで破壊魔法しか使えなくなっちゃって。破壊魔法なんて私作ってないから邪神のものよ。それで王子様が十六歳になった年、世界が壊れたわ。完全に乗っ取られたのよ。体の内側から暴走して王宮を中心としてサージス国全土が焼け野原になったの。貴方が最期に見た光景がそれね』



 愚痴を言うようにつらつらと言い訳を並べる神に、忘れたくても忘れられないあの光景がフラッシュバックする。

 あれは本当にあったことなんだ。

 この、ヴィーネ神とやらが信仰されなくなったせいで王子様が呪われて、俺の大切な人は死んだ。


「どこにいるかはわかりませんがヴィーネとやら。覚悟はできていますかね。俺の大切な人を奪い、王子様の未来を潰したツケは払ってもらいましょうか」



『ちょ、ちょちょっ! 待って待って! まだ王子様呪われてないの! 過去に戻したのよ! 王子様が呪われる前に! あ、貴方の家族も無事よ! どうどう……落ち着いて』


 ベッドに立ち上がった俺にそんな声が降ってきた。

『十六歳で死んだ貴方は六歳まで巻き戻ったから同じ年の王子様も無事よ。もうすぐ王子様の誕生日パーティーがあって、王都にお披露目に来るからそこで貴方の出番よ。邪神に呪われる前に王子様を助けてあげて。私は今神力を巻き戻しで消費しちゃってるからできないのよ。とりあえず貴方には神の加護与えて全属性魔法も使えるようにしておいたから。あ、あと学力も。じゃあ守護者としてよろしく!』

 言うだけ言って神は去っていった。




「いや、俺?」

 守護者とかいう重要なポジションならお貴族様の方がよくないか、と。こんなしがない屋台の息子でなくても。しかもお披露目って言ったって王子様がいつどこに来るかもわからないのに。



 守護者を王子様にすれば呪われないのでは? そこまで考えてはっと思い出した。俺は十年ほど時を巻き戻されている。家に唯一ある鏡に映る俺の顔はあの時とは違う。そのまま一階のリビングに雪崩れ込んだ。


「父さん、母さん、マリア!」

「あら、早いわね。マリアならまだ部屋で寝てるわよ。起きたならハルも顔洗ってらっしゃい」

「は、はい」


 いた、いた、生きてた……! 本当に! 巻き戻ってる!

 このままではただの変な人なので心の中で歓喜した。井戸の水を汲み、冷たい水をかぶる。

 お貴族様の家な冷水ではなくぬるま湯で顔が洗えると思うけど生憎うちはドがつくほどの庶民。庶民が王子様のお披露目に行けるかどうかが一番不安だ。商家の息子ならまだ可能性はあったかもしれないが……。



 いや、お披露目パレードって言ってたな。王都を馬車に乗って周るようだし。


「父さん、俺王子様の誕生日のお披露目パレードを見に行きたい」

 ほつれてボロボロになったタオルを持って両親の元に向かった。あの神はあまり信用したくないが王子様に恨みはない。それに王子様を救えればヴィーネ神はまた信仰されるかもしれない。俺は厄介事から逃れられて皆を失わずにすむ。


「ああ、三日後の。父さんは店があるし母さんとマリアは買い出しだろ? ハルもその予定だったよな?」

「うん、でも気が変わった。どうしても行きたくなったの」

「うーん……じゃあ教会の方で魔法属性を見てもらって一人で身を守れる程度の魔力量であれば行っても良いよ」

「わかった、ありがとう」



 俺があの神の言う通り守護者なら潜在魔力量は多いはず。あとは努力次第。


「ご飯食べたら行ってくるよ」

「いや父さんも行く。ハルはまだ六歳なんだから属性もわからないのに一人で歩かせられないよ」


 俺は父さんの言葉に素直に頷いた。どうにも十六歳の精神が抜けない。

 この日は俺とマリアの魔力を調べに教会まで行くため店は閉めたそうだ。

「お兄ちゃん、楽しみだね! 何になるんだろな〜」

「うん、楽しみだね」

 小さくて暖かいマリアの手を握り直し、前を向いて歩いた。

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