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恋に無縁な理系令嬢、公爵令息に溺愛されそうです  作者: あさじなぎ@小説&漫画発売


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12/12

12 お昼を一緒に

 技術館を見て周ると、一時半を過ぎてしまっていた。


「あら、けっこう時間、過ぎてしまったわね」


 言いながら私は腕時計に目を落とす。

 二時間近く、技術館で過ごしていたことになる。そんなにいたつもり、なかったんだけど。


「あぁ、そうですね。この時間ならレストラン、空いてきているだろうからちょうどいいかも」


 確かにそうね。

 私たちは技術館から歩いて十分ほどの場所にある、ピザのレストランに向かった。

 お昼を食べ終えて、私たちは外に出る。もちろん食事代は、あとからエルネストに渡した。

 時間はもう二時半だ。

 私はエルネストを振り返って言った。


「楽しい時間をありがとう」


「え? あぁ、いや。こちらこそ、付き合ってくれてありがとう」


 と、照れたように彼は笑う。

 素敵な人なのに、婚約破棄されたなんてもったいないわね。

 エルネストはちょっと首を傾げて悩むそぶりを見せた後、私の顔をじっと見て言った。


「ねえ、リタ。また今度、誘ってもいいかな」


「え? 誘うって?」


 どういう意味かと私は首を傾げる。

 するとエルネストはばっと、頬を紅くして一瞬目をそらした後、首を横に振って私を見つめた。


「あの……今日、楽しかったし、また一緒に出かけたらなと」


「あら、そういうこと? 大丈夫よ」


 そう笑って答えると、彼はほっとしたような顔になる。

 なんだか表情がころころと変わっているけれど、どうしたのかしら?


「エルネスト、どうかしたの?」


 不思議に思って問いかけると、彼はハッとした顔をしたあと、ぶんぶん、と首を横に振る。


「だ、大丈夫。えーと、また連絡するよ」


「つぎは私の方からお誘いするわ」


 そう私が提案すると、またエルネストの表情が変わる。面白い人ね。


「だって、今日、貴方が私を誘ってくれたんだもの。今度は私がお誘いするわ。そうね、行ってみたいカフェがあるし」


 さっき見た、レストランの案内地図を見て、興味を持ったお店がある。

 今日は行く気がないけど、次、時間が合ったら行きたいなって思ったのよね。あ、食べ歩きもいいかしら?

 なんてことをひとり考えていると、エルネストは嬉しそうに笑い、


「喜んで」


 と言ってくれた。



 そのあと散歩をして、帰宅したのは四時頃だった。

 家に帰るなり、なんだかそわそわした様子のお父様に捕まってしまった。


「リタ! どうだったんだ、デートは!」


「え、デート?」


 いったい何のことかと思いつつ、私は一瞬考えてしまう。

 デート、というのがエルネストと出掛けたことだと気が付き、私は、あぁ、と呟いた後言った。


「図書館でお話をした後、お散歩して魔法科学技術館行って、お散歩しただけよ」


「他には? 次の約束とかは?」


 と、なんだか必死な様子で言ってくる。

 ちょっと怖いんですけど、お父様?


「次の約束って……そうね、来週、私が行きたいお店に付き合ってもらうことになっているけど……」


「よし!」


 言いながら、お父様が拳を振り上げる。

 なんなのかしら、本当に。


「旦那様、気が早いですよ」


 呆れた様子の家政婦長が、お父様にそう声をかけた。

 するとお父様は、家政婦長の方をばっと見て早口でまくしたてた。


「だって、リタが公爵家のご子息とデートしてきたんだぞ? このリタが! こんなの期待するしかないだろう!」


「期待って何よ」


 思わず私はジト目でお父様を見つめてしまう。

 するとお父様は今度は私の方を、大きく目を開いて言った。


「決まってるだろう! 結婚だ」


 そしてお父様は腕を組む。


「相手は公爵家のご長男。うちには過ぎる相手だが、縁は大事にした方がいい」


「はいはい」


 呆れながら言い、私はお父様の前を通り過ぎ階段へと向かう。

 まったく、二言目には結婚を口にするんだから、面倒なのよね。


「リタ! この運、逃がすんじゃないぞ!」


 なんて叫んでいる声を聞き流し、私は階段をのぼりながら言った。


「あ、お茶、お部屋に運んでもらっていいかしら?」


 そう家政婦長に声をかけると、彼女はこちらを見合上げて、にっこり笑って言った。


「かしこまりました、お嬢様」


 その返事を確認して、私はそそくさと階段をのぼりきり、部屋へと急いだ。 

 部屋に戻った私は、さっそく手紙をしたためる。

 連絡手段が手紙しかないって不便よね。

 学校で会えなくはないけど、学部が違うからそうそう一緒にはならないし。

 そう思いつつ、私はエルネストへの手紙の文を考えた。


「まずは今日のお礼でしょう? それで、次の約束の話と、時間。お迎えはえーと……」


 言いながら、書く内容をメモにまとめる。

 書きながら私は今日のエルネストのことを思いだした。

 図書館での会話。技術館での空気。ランチの後交わした約束。

 

「楽しかったな」


 そう呟き、思わず笑みがこぼれてしまう。

 一緒にいてさほど気を使わなくていいし。公爵家の息子なのに全然偉ぶったりもしないし。私と変わらない、普通の大学生っぽいのよね。

 手紙を書き終えた頃、メイドのアネッサがお茶とお菓子を持って来てくれた。


「お待たせいたしました、お嬢様」


「あ、ちょっと待ってて」


 私は慌てて手紙に封をする。


「はい、なんでしょうか?」


「ねえ、この手紙をお願い」


 文机から立ち上がり、私はソファーの方へと近づく。

 そして、お茶を用意してくれたアネッサに、書いた手紙の封筒を差し出した。

 すると彼女はそれを受け取り、


「かしこまりました」


 と言い、頭を下げた。


「よろしくね」


 アネッサが去り、私はひとりソファーに腰かけてお茶をいただく。

 来週九時過ぎにお迎えに行きますって手紙に書いた。

 カフェに行って、あとどうしようかしら?

 アイスクリームを食べに行くのもいいし……馬に乗りに行くのもいいわね。

 考えていると自然と心が弾んでくる。

 そうだ。

 と思い、私は雑誌を引っ張り出して、どこに行くかを考えた。

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