吾輩の場合は
◆宵っ張り
気が付くと、スマホの目覚ましが振動していた。
ああでもない、こうでもない、と構想を練っていた。もうちょっとだったのに、いいところで起こされてしまった。
昨夜は一〇時過ぎまでパソコンに向かっていた。したがって、相棒の盲導犬・エヴァンのトイレをさせたのは一〇時半くらいだった。いつもより一時間以上おそい。
◆モーニングコール
着替えてトイレに行くと、一階でエヴァンが小さな甲高い声で鳴いた。筆者を呼ぶ声だ。めずらしいことがある。
(何かあったのだろうか)
何げなく、スマホの時計を表示させると、六時半だった。三〇分ほど寝過ごしてしまった。昨夜は妻が夜勤だった。どうも、一人だといけない。
時間的に見て、エヴァンはトイレを催促したのではなさそうだ。夕食は少し早めではあったが、別にめずらしいことではない。では、何を知らせようとしたのか。謎である。
◆重荷
夏目漱石は一九〇五年(明治三八)に『吾輩は猫である』を著した。
漱石に倣い、犬の目線で文明批評することを思いついた。最近の世相には腹に据えかねるものがあったからだ。
不遜にも『吾輩の場合は犬である』と題して、書き始めた。未熟な筆者にはテーマが重すぎたのか、はたと行き詰ってしまった。おかげで、昨夜は夢の中でも苦しんだようだ。
◆太陽と共に
最近、奇妙な時間感覚を覚えていた。
スマホに時刻を表示させると、05:55とか04:40などということが多かった。ある時など05:18、5/18とあり、
(一体どっちが時刻なんだ)
と一瞬ながら、戸惑ってしまった。
目覚めの良い朝と悪い朝がある。概して、筆者は目覚めが良い方だった。このため、04:40で起きても平気でいられた。
昔の人は
「太陽と共に起き、太陽と共に寝ろ」
と教えた。
朝はともかく、日没とともに寝なさい、というのは現代では無理がある。筆者などは夜の時間を持て余す。
◆イヌ様さま
動物はどうなんだろう。
いつまでも煌々と明かりをつけているのはバイオリズムを乱すのでは、と心配する。ただ、夜中に家人が帰宅すると、吠える。草木さえ眠る時間帯でも、警戒を解いてはいないようだ。
今朝など、もしかしてエヴァンは
「太陽が昇ってるよ」
と知らせてくれたのではないか。
おそらく、猫だと、こうは行くまい。
☆
「主人はまた訳の分からないことを書いている」
吾輩君が寝そべりながら、冷ややかに見上げていた。
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