探し続けた男
探し続けた男
男は電車に乗った。
通勤電車は身動き取れぬ程混雑していた。
職場までは家の最寄り駅から7駅もある。
いつもと変わらぬ朝、そしていつもと変わらぬ満員電車。
男は満員電車に揺られながらひとつの事をずっと考えて
いた。
(お腹が痛い・・・漏れそうだ・・・)
男は下痢気味だった。
両手はしっかり吊り皮を掴んでいたが顔は少々青くなって
いた。ときより電車が揺れるとお腹の中の物体Xが下へ下へ
と移動しているのがはっきりとわかった。
(こりゃやばい。降りよう。次の駅で降りよう)
男は次の駅で降りる事にした。まだ時間はいくらか余裕が
ある。途中下車してもまだ会社に間に合うと判断した。
「〇〇駅〇〇駅」
アナウンスが聞こえた。男は慌てて降りてまっさきにトイレ
に向かった。
(もうすぐ。もうすぐだ。)
男は階段を駆け下りた。そしてトイレが見えた時だった。
トイレのまわりを物凄い数の警官が取り囲んでいる。
警官の一人がスピーカーを持って叫んでいた!
「只今トイレ内にて不審物が発見されました!爆発物で
ある可能性があります!!皆様落ち着いて駅構外に避難して
下さい!!」
するとトイレからいかにも爆弾っぽいものを持った警官が
出てきた。
たちまちまわりにいた客達はパニックになり一斉に改札口
に殺到した。
(なんてこった!!こんな時に一生に一度体験するかどう
かの出来ごとが起きるなんて!まずい!俺の中の不審物も爆
発しそうだ!!)
男はパニックになった群衆に飲まれ強制的に改札口から
押し出されてしまった!男は別な意味でパニックになって
いた。
(こ、この駅には駅ビルがない。コンビニだ。コンビニ
を探そう!コンビニぐらいあるだろ!)
男はそう思いコンビニを探した。すると100メートル
位離れた所にロー〇ンの看板が見えた。
お尻に全身のすべての力を込め全神経を集中させていた。
男はコンビニに入るなり店員に
「す、すいません。トイレを使わせてください」
期待すべき返事はただひとつ「はい。どうぞ」だ。
店員が困ったような顔をして言った。
「すいません。只今トイレ故障中なんですよ。」
男は半泣き状態でコンビニを出た。
(よりによってなんで今壊れてるんだ!それにあんたら店
員はどこでお〇っこするんだい?どこでう〇ちするんだい?
やばいかもしれん。本当にやばいかもしれん!)
男はちどり足状態で真っ直ぐに歩けない状態だった。
(何故だ!何故なんだ!たかがトイレじゃないか!日本全国
にどれだけあると思ってるんだ!どんな貧乏な家だってきっ
とトイレ位あるだろう!あれか?すべてのトイレは俺に使わ
せない条約でも実は国会で成立してたのか!?」
もうすでに男の頭の中は訳のわからない状態であった。
すると道路の歩道寄りに一台のタクシーが止まっているのが
見えた。
男は駆け寄ってタクシーの窓を叩いた。
タクシーの運転手ならトイレスポットを把握していると思っ
たのだ。タクシーのドアは開き男はすぐに車内に乗り込むな
り運転手に
「頼む!1分以内に確実に100%すぐに使えるトイレま
で俺を連れて行ってくれ!報酬に5000円出す!」
すると運転手は
「1万だ!俺の行きつけの公園のトイレなら絶対にすぐ使
えるぜ!今さっきもそこで用を足してきたとこだ!」
「わかった!1万出す!頼むから早く出してくれ!」
「商談成立だな!シートベルト締めてくれ!飛ばすぞ!」
運転手は急アクセルでUターンをかました。猛スピード
で走る。1分もしないうちに人気のない公園に着いた。
「お客さん着きましたぜ!ここなら邪魔者もいねえ。ゆっ
くりやれるぜ!」
たしかに運転手の言うとうりトイレは誰も使ってる気配
はなかった。男は一万円を渡し車を降りるとトイレに駆け込
んだ。そこには夢にまで見たトイレがあった。
男はすべての力を再びお尻に込め物体Xを大噴射させた!
ぶりぶりぶりぶりぶりーーーーーーーーーーーーぷっ
けたたましい爆音が公園に鳴り響いた・・・
男の顔はまたたくまにすっきりとした表情に変わっていく。
(はああああ。すっきりした。助かった・・・しかし
なんだろう・・・妙に下半身が気持ち悪い・・・少し漏れた
のかな?いや、でも物体Xは便器に綺麗に収まっているし漏れ
た様子もない、なんだこの違和感は・・・)
すると男の意識は薄れていった。
しばらくするとトイレにいたはずの男は自分の家の部屋の
布団の中で目を覚ました。
読んで下さってありがとうございます。
のちの作品の参考にしますので是非お暇があれば
ご感想お願い致します。