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車内にて

食器を洗い終え、コートを着て、車に乗ります。


「・・・どうしようかな、これ」


わたしは、おばあちゃんの〈花護(はなまも)り〉を見て呟きました。


車のバックミラーに着けとくか・・・でもそうすると持ち運ぶ時、忘れていくかもしれないしなぁ。


〈花護り〉は基本携帯する物なのです。


結局、いつも通りコートのポケットにしまう事にしました。


車に鍵を挿し、エンジンを掛け、出発します。


雪は、今は止んでいます。


道路は、薄っすら雪化粧していました。





今日は、月に1回の通院の日です。


病院は、渡霜(わたしも)の南にあります。


精神疾患を患い始めた中学の時からずっと通っている病院です。


最近改装して新しくなりました。


「今日のおみやげは、どのドーナツにしようかな〜」


出発したそばから帰りの事を考えていると、エアコンから何やら異臭がしだしました。


「・・・・・・?」


生臭いような、何かが腐ったような、ツーンとした臭いです。


この臭いは・・・。


少しして、はっ、とします。


(忘れてたー!)


わたしはすぐに車道の脇に車を停めました。


・・・いけないいけない、そうでした。


病院までのルートは、渡霜の〈内〉にあるんでした。


ついスーパーに出かける感覚で出て来ていました。


迂闊・・・。


反省しながら、額に神経を集中させます。


しばらくすると、視界に薄っすら虹色がかった白色・・・はい、わたしのマナの色がかかり、だんだん、黒いモヤのような物が見え始めました。


(ああー、だいぶ車の中に入ってきてる・・・)


少しげんなりします。


わたし達一族には、額に見えない〈目〉があります。


普段は、使わないで閉じているのですが、少し額に神経を集中させると、パカッと開いて、このように視界にマナの色がかかり、〈ダナ〉の瘴気等が見えるようになるのです。


〈ダナ〉の瘴気とは、今見えている黒いモヤの事。


本当は、車に乗った時に〈目〉を開いていれば、ハンドルを握った瞬間、マナがわたしの手を通して車にも移り、車内に結界のような物が出来、瘴気も中に入って来ない筈でした。


一度車内に入った瘴気は、後から結界のような物を作ったとしても消えません。


(・・・アレを、使いますか)


わたしはバッグの中から、黒いふわふわのポーチを取り出しました。


チャックを開けると、中はピルケースのようになっていて、12個に仕切られ、それぞれに十二星座の金色のマークが描かれた透明な蓋がついています。


さらにその中には、それぞれ、内部に炎や星や花等が映った、ビー玉のような丸い透明な石が入っています。


「こういう事たまにあるから手放せないんだよね」


わたしは十二星座の天秤座のマークが描かれた蓋を開け、中から石を取り出しました。


石の中には、光る竜巻が揺れています。


「よろしくお願いします」


わたしがそう言うと、石は水のように形を変え、細長い小さな笛になりました。


その笛を吹くと、車内の空気が回り始めます。


くるくる、くるくると。


そうしてると次第に〈ダナ〉の瘴気も霧散して行きます。


やがて、瘴気は散り散りになり、後には小さな黒い粒が残りました。


黒い粒は、助手席と運転席の間にある飲み物を置く穴に落ちます。


わたしはそれを拾い、運転席脇のドアポケットから取り出した、小さなガラスのキャンディポットの中に入れました。


入れて、黒い粒を指で押して、軽く念じます。


すると。


ボッ。


と、黒い粒が燃えました。


蓋をして、飲み物を置く穴に置きます。


「・・・さて、出発しますか」


エンジンをかけ、車を発進させました。


今度は見えない〈目〉を開いたままー一ー一ー。











わたし達の先祖がいた世界では、誰もが生まれた時から、〈祝福(しゅくふく)〉と呼ばれる、己のマナを原動力に使った、魔法のような力を行使する事が出来たそうです。


それは人々の生活に深く結びつくと同時に、〈ダナ〉に対する唯一の抵抗手段として発展していきました。


しかし、わたし達の先祖がこの世界に来た時、その〈祝福〉の力が使えなくなった事に気が付いたのです。


理由は、この世界が、先祖達の神様の領域外の世界だからでした。


このままでは〈ダナ〉を抑え込む事が出来ない、と困り果てた先祖達を見て、この世界の神様達は言いました。


『何とかして、あなた達の世界の神様と話が出来ないか』


と。


神様達がそう言ったその時でした。


突然、先祖達の内の2人の体から、それぞれ光が飛び出して来たのです。


光は2人の子供の姿に変わりました。


1人は、漆黒の髪に明るい空色の瞳の子供。


名前をアイカ。


もう1人は、輝くような真っ白な髪に深い海色の瞳の子供。


名前はエアル。


その姿は、先祖達の内の2人とよく似た姿でした。


2人の子供は言いました。


『私達は、彼らの世界の神から分離して生まれた存在です。私達は、彼らの世界の神と、離れていても通じ合う事が出来ます。私達を通して、話をしましょう』


と。


実は、この先祖達の内の2人は、この子供らが人として転生して生まれた存在だったのです。


普段は意識の底に眠っているのですが、あまりの非常事態に目を覚まして出て来たのでした。


その後、こちらの世界の神達と、あちらの世界の神達で話をしました。


話をした結果、こちらの世界にある(ことわり)を介してであれば、〈祝福〉の力を使う事が出来る、という事に話が落ち着きました。


では、こちらの世界のどの理を介するか、という話になり、色々案を出した結果、西洋占星術の理はどうかと、あちらの神達が言い出したのです。


理由は、アイカの転生体が、西洋占星術の知識を持っていて、それを元にした〈祝福〉を多数生み出しているから、だそうです。


なぜ、その転生体の人が西洋占星術の知識を持っていたのかというと、その人は、元々この世界の人間だったかららしいのです。


何らかの理由でこの世界で死んであの世に行く途中、偶然あちらの世界に迷い込み、魂がボロボロになり消えかけていた所を、アイカが見つけ、自らと同化させる形で魂を消滅から救ったという事なのでした。


そしてそのままエアルと共に転生した時に、生前の記憶が蘇り、その時学んだ西洋占星術の知識を元に、オリジナルの〈祝福〉を生み出したと言う事なのです。


結局、〈祝福〉は、西洋占星術を介して行使出来るようにすると言う事に決定しました。


こちらの世界で生まれた日の星座から、使える〈祝福〉が決まるシステムになったのです。


しかし、それでは色々不便が出る為、自分の生まれの星座以外の星座の〈祝福〉が使えるように、それぞれの星座の〈祝福〉の力を込められた石が、あちらの世界の神から贈られました。


以来、子孫のわたし達は、自分の生まれた星座モチーフの〈祝福〉を使い、今日も〈ダナ〉を抑え込んでるのでした。









今日はちょっと瘴気が濃いなぁ。


運転しながらちょっと思いました。


瘴気を〈散らす〉天秤さん達が今朝当たり来てた筈なのですが、ちょくちょく瘴気溜まりを見かけます。


(ひょっとして、〈散らし〉た所からまた出たのかな・・・)


一度〈散らし〉た所から再び瘴気溜まりが出来る事は普通にある事なのですが、大抵1回〈散らし〉たら、次出来るのは、だいたい翌日くらいになると聞いています。


なので、朝〈散らし〉たのに、昼また出てきたのなら、それは大分瘴気が濃いと言う事です。


普段から東西南北分担して〈散らし〉てる天秤さん達ですが、今日は残業確定でしょう。


もしかしたら、今頃各地区で、天秤さん達以外にも招集がかかってるかもしれません。


(今日はまっすぐ帰った方がいいかも・・・・・・あ)


噂をすれば、天秤さん。


左側の歩道に杖のような物を持った2人組が歩いています。


おそらく近くに移動用の車もある筈です。


(何か話してる・・・)


わたしはそのままその2人の側を車で通り過ぎました。


(何だか・・・病院の方に近づくにつれて瘴気溜まりを見かけるような・・・)


何だか嫌な予感がします。


病院は、この先のなだらかな坂道を登った先にあります。


(やっぱり・・・診察終わったら早めに帰ろう)


改めてそう思いながら、わたしは少しアクセルを上げつつ、病院までのなだらかな坂を登り始めました。


キャンディボックスの中の黒い粒は、もうすぐ燃え尽きそうです。


〈目〉を開けて見る世界は、美しいけど、同時にいつも不穏なのでした。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

いきなり昔の事ぶっ込んじゃって唐突だったかもですね(汗)

なるべく週一ペースで更新出来たらと考えていますので皆さんもそんな感じでいて下さるとありがたいです。

それでも遅れたらごめんなさい(_ _;)

それでは(^_^)/

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