表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

昔の話だったり今の話だったり

時期は2016年頃だと思ってください

わたしの名前は春瀬(はるせ)癒雫(ゆな)

今年で28歳になります。

甘い物が大好きで、趣味はドライブで、苦手な事は運動と掃除です。



最近、色々あって、障害者だという事がわかりました。








外はくもりでした。

薬が効いて眠っていたわたしは、午前11時のタイマーの音楽と共に目を覚まし、台所へ向かいます。

壁の日めくりカレンダーを見ると、12月の火曜日でした。

今日は、オムライスを作る日です。

ちなみにここはおばあちゃんの家だったりします。

「窓際は冷えるなぁ・・・」

あくびをしながら独り言ちました。




なぜわたしが、平日の昼間に、おばあちゃんの家でオムライスを作っているのかと言うと、現在働いていないからです。

無職です。

以前は転々としながらも、一応仕事勤めしていたのですが、精神疾患が悪化し働けない状態になりました。

その時に知ったことなのですが・・・。

わたしには自閉スペクトラム症という障害があります。

過去は、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群等、色々な呼び名がありましたが、今は全てまとめて、自閉スペクトラム症と呼ばれています。


保育園の時、みんなが集まって部屋にいる中、一人だけ外に出てブランコに乗っているような子供だったと、母から聞きました。

好きなアニメのセリフを暗唱し、さらにそれを延々と呟きながら歩き回っている事も、よくあったそうです。


小学校の時は、じっと座っているのが苦痛で、よく鉛筆を噛んで気を落ち着けていました。

あとは、スーパー等母と買い物に行くと、店内をぐるぐる歩き回る癖がありました。

そして、パニックになると泣き叫んでしまう事がよくありました。

これは、正直、今もあります。

休み時間も、掃除等の複数でやる作業、遊び等に混ざれなかったので、友達と遊ぶより、本を読んだりピアノを弾いたり、グラウンドを散歩したりして、一人で行動する事が多かったです。


そんなこんなで中学生になり、ついに周りの人達の会話についていけなくなりました。


話してる事に対して受け答えしてもズレた返答をする事が増えました。

時にはストレートに言葉を発して反感を買った事も何度かあったように思います。

周りの子達のレベルが明らかに自分より上な感覚が常にあって、もう合わせる事すら難しくなって来ていました。


そんなわたしの様子を、周りも奇妙な気持ちで見ていたのでしょうか、周りと違う事が許せない人、主に男子からよくいじめられました。

休み時間中、ずっと悪口を言われ続けたり、机を離されたり、わたしの頭すれすれで殴る遊びをしてきたり。

よく耐えられなくてパニックで泣き叫んでいました。

・・・今思うと、その反応が楽しくて、何回も執拗に絡んできていたのかもしれませんね。


それらが原因で精神疾患になり、精神科に通院する事になりました。

これは、現在に至るまで続いています。


その後、なんとか高校を卒業し、専門学校を卒業しました。

そして一応就職もしました。

が、どこも長続きしませんでした。

大抵数ヶ月かそこらで、主に人間関係に支障が出て辞めました。

しばらく働いていない時もありました。


当時、わたしは専門学校の奨学金の返済に明け暮れていました。

スマホ代や月に1回通院していた精神科への通院費も払っていた為、実家暮らしではあったけれど、金銭的にはかなりカツカツな状態で暮らしていました。

更に当時働いていた職場が、どこも大きな音がする工場での仕事だったので、大きな音が苦手なわたしにとってはひどく疲れる環境でした。

おまけに職場の人から嫌がらせのような物も受けていて、本当に色んな事がストレスでした。


そんな事ばかり続いたからでしょうか、ある時から、日常の些細な音が気になるようになりました。

咳の音や、話し声、足音など、すべてが苦痛で耐えられなくなったのです。

そのうち幻聴まで聞こえるようになり、1人では外も歩けない状態まで追い詰められました。

仕事も出来ない状態になり、自分はどうしょうもない人間だと考えて、毎日泣くようになりました。


ある日。

何処かからかスマホに電話がかかって来ました。

市役所の人からでした。


電話の内容はこうでした。

障害年金という制度がある、という話と、発達障害という言葉を知ってるか、という話。

さらには、一度検査を受けてみてはどうだとも言われました。

発達障害。

その言葉には覚えがありました。

高校の時、ネットでたまたま見かけた言葉。

障害特性。

なんとなく、身に覚えがあるなぁと感じていました。

いましたが、考えすぎだと思い、意識の外に飛ばして忘れました。

その言葉を、まさか今になってまた聞くことになるなんて・・・。

何か運命的な物を感じました。


その後の行動にあまり迷いはありませんでした。


すぐに発達障害の検査を受けて、正式に、自閉スペクトラム症と診断を受けました。

診断を受けた時は、少しほっとしたような不思議な気持ちになりました。

ショックよりも、やっと理由がわかった安堵感の方が勝っていましたから、やっと少し楽になれたような気がしました。


そして精神科の主治医の先生に、障害年金の申請に必要な診断書を書いてほしいと頼み、OKをもらうと年金事務所に。

年金事務所の人から、普通のお嬢さんに見えますとか言われたけれども、気にしませんでした。

悪い意味で言ったわけでは無いんでしょうけど。


その後、母に手伝ってもらい、申請書類を書いて、提出しました。



そうして待ちました。

正直、藁にも縋る思いでの申請でしたから。

通らなかったらどうしようと、毎日母に縋って泣きました。


それから、何日後でしたっけね。


無事、障害年金を貰える事が決まりました。

あの時は、診断が降りた時よりも安堵したかもしれません。

母と、主治医の先生、そしてあの時電話してくれた市役所の人には本当に感謝しています。


その後は、以下の通り。

貰った障害年金は、奨学金の返済や、その後、持たざるを得なくなった自家用車の支払い等に使われる事になりました。


精神科の通院費も、自立支援医療制度によって、医療費が3割負担から1割負担になり、前より通院費が安くなりました。


さらに、叔母の花雫(かな)ちゃんから、お手伝い代を出すから花を作る手伝いをしないかと声をかけられ、金銭的に助けて貰える事にもなり、しばらく好意に甘える事にしました。


ついでに、多忙なおばあちゃんの代わりに、花雫(かな)ちゃんや母にお昼ごはんを作る事にもなり、今日も今日とて、オムライス等作る日々・・・が、しかし。


「どうしよう・・・」


わたしは今、青ざめています。


「ケチャップがない・・・」


冷蔵庫から出した空の容器を片手に。


「もう玉ねぎ炒めちゃったから別のに変えることも出来ないし、自宅から取りに行こうにも、そもそも自宅にもケチャップ無いし・・・もう買いに行くしかないよ・・・でも・・・」


1人でお店に入るのは怖いなあ・・・。


いや、でも・・・。


「・・・イヤーマフつければ大丈夫かも」


わたしは茶の間の方を見ます。

テーブルの上には、昨日の夜届いたばかりのイヤーマフが置いてあります。


イヤーマフとは、防音イヤーマフの事です。

つける事で、周りの音を少し小さくしてくれます。

射撃場や、工事現場でも使われていると聞いた事もあります。

わたしのような発達障害の人でもつけていると聞いて購入したのですが、はたして・・・。


「・・・行ってみようかな」


わたしは意を決しました。


すぐにコートを羽織り、バッグを持ち、玄関へ向かいます。

外は、薄っすら雪が積もっていました。


あー、雪降ってたから寒かったんだ・・・。


車に乗ってエンジンをかけ、出発します。


・・・と、その前に。


「お母さんに連絡しとかなきゃ」


わたしは目をつむります。

両手を器のように合わせ、お母さんの顔を思い浮かべ、念じました。


(お母さん、ケチャップ買ってくるね・・・)


目を開けると、虹色がかった白い卵が、両手の器にころんと転がっていました。

卵は、ぴききっ、とひび割れ、程なくして、中から、卵と同じ色のシマエナガのような丸い鳥が生まれてきました。


鳥は、車の窓ガラスを、まるで幽霊のようにすり抜け、母のいる事務所の方へ物凄いスピードで飛んで行きます。


少しすると、頭の中で、声がしましま。


(わかった・・・)


と。


それは、母の声でした。


それを聞き届けると、今度こそ、わたしは車を発進させました。


丁度、11時半頃の事でした。






最後まで読んでくださりありがとうございます。

次も頑張ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ