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4 猫か人間か



 「猫ちゃんこんばんは。今日は拘束されずに、服も着させて貰えて良かったね」

 「妙な事を言うな、ジルベール」


 次の日の夜。

 部屋にリューイ、ゼフィー、ジルベールの3人がいた。

 仲間なのかな。よく3人一緒にいる。

 リューイが口を開いた。

 

 「本題だが、お前を森に帰す事は出来ない」

 

 リューイの言葉にピクリと体が反応する。

 拘束されていない今、脱走だって可能だ。

 チラリと窓を見る。

 そんな私を見て、ゼフィーが慌てて言った。


 「殿下、興奮させないように。言葉を選んで下さいね」

 「…今までドラゴンが森を守っていたが、居なくなった今、あの森にはモンスター共が沢山押し寄せるだろう。手付かずの自然の中、動物達が数多くいるからな。それに禁猟区にしたとはいえ、中にはお前を狙う密猟者もいるかもしれない。危険だ」

 

 モンスター。

 シャラと同じ様な、魔力を持つ強い生き物。

 人間とは違うが、動物を虐めるらしい。

 初めてその言葉をきいた時「怖い」と言ったら、私が居るから大丈夫だと、シャラは笑っていた。


 「ドラゴンの力を継承した私が、騎士団と共にあの森は守る。しかし、数が多い。あの森だけでなく他の森でもモンスターが出現すると報告を受けている。だから、危険の少ないこの部屋になるべくいて欲しい。それがドラゴンと約束したことだ」


 狡い人間だ。

 シャラと約束したと言えば私が言うことを聞くと思っているらしい。

 

 「いつまで?」

 「期限はない」


 え。無期限?一生?それは嫌だ。こんな所にずっと閉じ込められるなんて。

 黙ってしまった私に、リューイは続ける。


 「それにお前はまだ未分化だろう?不用意に外に出て何かあっては困る」

 「未分化って何?」

 「知らないのか?」


 リューイが驚いて目を見開いた。

 他の2人も。

 そんなに驚く事?

 

 「…人猫族はいずれかの種族と交わる事によって、その種族に分化すると聞いたが…違うのか?」

 「知らない。交わるって交尾の事?」

 「…まあ…」


 じゃあ、交尾すれば種族が決まるの?

 猫とすれば猫と。

 人猫とすれば人猫と。って事?

 だから、人猫はいないのかな。数が減って交尾する相手もいなくなったから。

 いや、人間による嫌がらせもあるだろう。


 「じゃあ、今すぐ猫と交尾すれば猫になれる?」

 「いや、待て待て待て待て!何でそうなる?ゼフィー、ジルベール、出入口を塞げ!」


 リューイが叫ぶより早く、2人がドアと窓に立ち塞がった。


 「何でって、猫一択でしょ。逆に何で人間なんかにならないといけないの」

 「リューイ殿下、俺はあなたが不憫に思えてきたよ。失恋な上にライバルは猫って」 

 「失恋って何?」

 

 ジルベールに問いかけると、リューイは怒った様にこちらを見る。


 「そんなものはどうでもいい。とにかくだ。今は人間の姿だから猫となんて無理だ」

 「じゃあ、朝になったら早速」

 「いや、えーと、ドラゴンと約束しただろう。人間を信じるって。だからあと1年待て。様子を見よう。それからどうするか決めても遅くない」

 

 え。シャラと人間を信じるなんて約束してないよ。

 それに、何でわざわざ1年待たないといけないの。

 今すぐ人間なんか止めたいのに。


 「私はドラゴンと約束した。アリスを守ると。だからその約束を果たさせろ」

 

 うーん、なんだか納得いかない。

 人間に守ってもらうなんて嫌だ。

 でも、シャラは命と引き替えに約束を取り付けたんだから、暫くここにいた方がいいのかな。シャラの為に。


 「なら、首輪外したい」

 「それは出来ない。いざというときの迷子防止と牽制の為だ。そもそも猫は首輪をするものだろう?」


 猫って首輪してる?

 でも人間の時も外れないから、そのまましてるよ。

 魔力で自動的にサイズが変わるみたいで、苦しくはないけれど。 


 「じゃあ、やっぱり、たまには外に出たい」 

 「…昼間、私が一緒に居られる時なら」

 「夜は駄目なの?」

 「アリスが人猫だということは、ごく一部しか知らない。人間の姿のアリスは目立つ。だから夜は駄目だ。それに人間の中には悪い者もいる。うっかり人間にされたくないだろう?」


 逆に悪くない人間なんていないと思うのだけれど。

 でも、うっかり人間になるだなんて最悪過ぎるから、言うことを聞いておこう。


 「あと」

 「まだあるのか」

 「あんまり、触られるの好きじゃない」


 私の言葉にゼフィーとジルベールが、憐れみの様な軽蔑の様な目で、リューイを見た。


 「そんな目で私を見るな。猫の時だけだ」

 「人間の時に触れる事が出来ないからって…そこまで追い込まれているんだね、お気の毒様」

 「アウトかセーフかで言ったらアウトでしょう」

 「ゼフィー、殿下は可哀想な人なんだよ。こんな美女に毎晩裸でいられたら…分かってあげて」

 「何故!?猫だけでなく他の動物だって触れてるぞ。なにが悪い」


 そう。猫の姿の時、リューイはとにかく触ってくる。

 頭とか肉球とか。

 たまに叫びたくなる時がある。実にストレスだ。


 「猫ちゃん、こう見えて殿下は動物が好きなんだよ。変態じゃないんだよ」

 「何を言っている、お前は」

 「リューイ殿下、保護区に連れていって差し上げるのは如何でしょう。あそこでしたら、人もいませんし」


 ゼフィーが提案した。

 保護区? 

 外に出れて人間がいないなら大歓迎。

 リューイが一緒というのは辛いけれど。

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