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ここはどこだろう、全くわからない。
混乱したのも束の間。身体のあちこちで、痛みの主張が強すぎることに気付いた。
痛すぎる、どうしてこんなに痛いの。誰でもいいから助けてほしい。
痛みとともに、呼吸が浅く速くなっていく。苦しい。
そんな強すぎる痛みの中、左手に痛みとは違う感触を感じた。周囲は薄暗くて、視界もぼやけてはっきりとしないが、感触のある方向へと視線を向ける。
視線と一緒に顔も向きを変える。新たな痛みが身体を走りに抜けて、少し顔が歪む。
「起きた」
誰かはわからない。ただぽつりと呟くように言葉が落とされた。
手にあった感触は静かに離れていき、次第にバタバタと周囲に慌ただしさを感じた。
少しすると人の気配がいくつか増えて、何か自分に話しかけているのが分かる。質問をされている気がするが、痛すぎてそれどころではない。
「—(い、いた、い)」
やっとの思いで言葉を振り絞ったが、言葉は音にならず空振った。それでも通じたのか、周囲に静かだが慌ただしさが生まれ、無機質な物音の次には左前腕に一瞬冷たさを感じる。
次第に痛みが和らいでくる。同時に安心で眠気が襲ってきた。
睡魔に負ける寸前の霞んだ視界には、安堵と心配を含んだ表情の美青年が映った。
「おかえり、シェイラ」