出会いの火曜日
ゆっくり走ったので着いた頃にはもう1時を回っていた。学校の駐輪場にゆっくり自転車を停めた。
その時、堤防を壊すかのように一気に前から喋り声がしたのだ。男子か女子かも分からない無数の声が前から迫ってくる。
(しまったー、今日早下校だったのかー)と嘆いてももう遅い。心の中で担任の谷口への理不尽の文句を言いながら校門をくぐった。前から見た事あるような、無いような顔が無数に迫ってくる、その顔の中には友達のタケル(須藤 タケル)の顔もあった。
話しかけようと思った瞬間、思わず声が出なかった。彼は私を認めた瞬間目を逸らしたのだ、まるで私という存在が目に入らないように。
ショックであったが、自分に言い聞かせた、彼は本当に私に気づいてないだけだったのだ、と。そんな嘘がチンケなものなんて知っていたが、この瞬間には効果があったらしい。気を取り直して校舎に入った。2年生の教室は2階なので階段を上がっていると、後ろから呼び止められた。
「大成くん?大成くんだよね?」
声だけで美人とわかる、いい声で呼び止めるのだ。こんな可愛い声の知り合いいたかと考えたが、ピンとこない。見たら誰かわかるかもと思い、振り向いたが全く検討もつかないのだ。