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とある阿呆の小話  作者: 矢瀧 忠臥
5/12

パンプスを履いた女

とある物書きに起こった不思議なもの

とあるデパートの服屋さんで、私はあるマネキンに目が留まりました。

それは、女性のように胸やお尻が出ていたのですが、どうにもそこには目が行きませんでした。

奇抜な服かと問われれば、そんなことは無いと答えましょう。


では何故、そのマネキンを注視しているのかというと、パンプスを履いていたのでした。

私は不思議に思いました。

何故、服屋なのにパンプスを履かせているのかと、我ながら気色の悪いことを疑問に持ってしまったのでした。

ただ、普通に靴を履かせている服屋もあるのは知ってはいますし、見たこともあります。

しかし何故か、そのマネキンの履いているパンプスが嫌に目を奪うのです。

派手な色合いでも無ければ歪な形でも無い。

一体、何が私の心を奪うのか。

パンプスを履いた女は、私を魅了している。


パンプスを履いた女の所為でずっと立っていた足が痛くなった私は、椅子に座った。

勿論、マネキンの見える位置に。

パンプスを履いた女の前を通る人は何人も居たのですが、その前に止まろうとする者は誰一人として居ませんでした。

より一層謎が深まるばかり。

私は何故、彼女の前に止まったのか…魅力的と言えば、私はそう思うのですが、他の人はどうやらそうでは無いみたいです。

私は、ロダンの考える人のように思案して椅子に座っていました。


次の瞬間、店員の一人がパンプスを履いた女の服を剥ぎ取るように脱がせました。

その光景にもやはり、私は目を奪われておりました。

言葉では言い表せない微妙な妖艶さが、胸の裏側をチクチクと刺してくるのです。

これは恋なんぞでは無いと自分に言い聞かせました。

そう思った瞬間に自分の負けが確定するのでは、なんていう妄想にも満たない想像が私を制御するのでした。

気が付いたら私は、意味も無くそのマネキンの前に立っていました。

そして眺めていました。

何をするでもなく、ただじっと。

触れてしまえば失礼なのでは、というさも当たり前のことが恐怖という形を成して蝕んできました。


そんなことをしていれば、彼女の服を持ってきた店員が、訝しげにこちらを睨んでおりました。

もう遅いのかもしれませんが、服を探すふりをするため上をキョロキョロ見上げ、パンプスを履いただけの女に無言の別れを告げました。


結局のところ彼女の魅力は分からずじまいでしたが。

強いて言うならば、私の好みのタイプだったのかもしれません。

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