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とある阿呆の小話  作者: 矢瀧 忠臥
4/12

長い注文

とあるBさんの昼食の出来事

ワイワイガヤガヤと賑わう西洋の雰囲気を醸し出すレストランで、僕は昼食を摂ることにした。

「すいませーん、すいませーん」

「はいはい!」と店員の女の子が元気よくこっちに向かって来た。

「注文をお伺いします」

「えーっと。この、ハンバーグ」

「はいっ?」

聞こえなかったのかわざとなのか、耳の裏に手を当てて聞き返してきやがった。

「いや、だからハンバーグ」と今度は分厚いメニュー表の絵を指して、大きい声で言った。

「すみませーん。当店では、『ハンバーグ』なんて言う食べ物は無いんですよー」

申し訳なさそう顔を浮かべながら、ちゃんとこの言葉を言えよと言わんばかりにメニュー表に指をトントンと叩いていた。僕は、これを言うのかと少しばかり躊躇った。食べログで中々いい評判のお店を見つけたと思ったが、どうやら僕にとっては場違いのような感じがした。


ようやっと決心が着いたので一つ咳き込んで。

「…じゃ、じゃあ。この『自然の大地から芽吹いた玉ねぎをベースにした、豚かぁ思ったら牛なんかい!って思わせてくれる…高橋さんが一から育てた国産の豚をミンチにしてこねにこねまくった、肉汁溢れるまろやかともジューシーともとれる口の中でホロロと解ける舌触りは贅沢の逸品と言っても過言では無い、ハンバーグという守護神がついた神聖なる肉の塊』を一つください」

「はい!セットに『母なる太陽の恩恵を授かった、神童と呼ばれる農家の矢島さんが丹精込めて作った禁断の果実、別名赤きダイヤモンドを一滴も逃さず搾りきった、あの三ツ星シェフが舌鼓を打った完全体のジュース』がありますが、どう致しますか?」

「…貰おうかな」


「分かりました、注文を確認しますね。『自然の大地から芽吹いた玉ねぎをベースにした、豚かぁ思ったら牛なんかい!って思わせてくれる…高橋さんが一から育てた国産の豚をミンチにしてこねにこねまくった、肉汁溢れるまろやかともジューシーともとれる口の中でホロロと解ける舌触りは贅沢の逸品と言っても過言では無い、ハンバーグという守護神がついた神聖なる肉の塊』が一点と『母なる太陽の恩恵を授かった、神童と呼ばれる農家の矢島さんが丹精込めて作った禁断の果実、別名赤きダイヤモンドを一滴も逃さず搾りきった、あの三ツ星シェフが舌鼓を打った完全体のジュース』、以上でよろしかったでしょうか?」

本当にあっているのか、というか間違っているのかすら分からない状態で頷いた。

「少々お待ちくださいね〜」と今日の仕事が終わったと言わんばかりに、軽やかな足取りで厨房に入っていった。


「お待たせしました!」と元気よく、頼んだ品を運んできた。

そんな僕の前に置かれたのは、普通のハンバーグと普通のリンゴジュースだった。取り敢えず僕は、『自然の大地から芽吹いた玉ねぎをベースにした、豚かぁ思ったら牛なんかい!って思わせてくれる…高橋さんが一から育てた国産の豚をミンチにしてこねにこねまくった、肉汁溢れるまろやかともジューシーともとれる口の中でホロロと解ける舌触りは贅沢の逸品と言っても過言では無い、ハンバーグという守護神がついた神聖なる肉の塊』と『母なる太陽の恩恵を授かった、神童と呼ばれる農家の矢島さんが丹精込めて作った禁断の果実、別名赤きダイヤモンドを一滴も逃さず搾りきった、あの三ツ星シェフが舌鼓を打った完全体のジュース』を飲み食いした後、食べログで低評価を書き連ねてその場を後にした。


もう二度と来ねぇ。

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