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記録No.5 派遣準備

「…なぁ大尉さんよ、この部品全部つけるのかい?…」

「…その予定です、データ上、付けても機体のどっかが壊れるなんてことは無いんですが…まさかこんなに多かったとは…」

「ディー、どんな改造計画組んだの…」


俺は格納庫にどんどん積まれていく部品たち…主に俺の機体のフル装備の装備達を整備長とシャロと3人で眺めていた。

驚いたものである、というか本部もわかりやすいもんである、まさか一日で届けてくるとは。


「恐るべし本部の行動力…これでここに残れる理由がなくなっちまったわけかぁ」

「…はぁ〜、おっかねぇなぁ。ってことは、明日から戦場に行くのか?」

「あぁ、そうなるなぁ…ふぁぁぁ、あ〜あ〜…ま、敵新兵器をぶっ倒しゃあ、すぐ帰って来れるさ」

「…」


深刻そうな顔をする2人に対し、俺は呑気に返した。

実際問題、そんな深刻な話では無いのだ。


「…ディーはいっつも平気そうに言うよね…」

「逆に言えばシャロはいつも深刻すぎるんだ、昨日だって散々甘えてきた上にキスマうむっ…」

「そ、それ以上は言わないでっ!」


シャロが慌てて俺の口を塞いできた。


「今日もお熱いこって…」

「っ…///」

「今更だろ?整備長さんよ」

「違ぇねぇ」


べしっとシャロにはたかれた。

俺はのんびりとした気分で、胸ポケットから爪楊枝を取り出す、今日はシナモンの気分だ。


「…ちなみに大尉さんや、現地にはどうやって?」

「ん?移動中に狙われでもしたら面倒臭いから機体に乗ってくよ」

「お、おう、つまりあのフル装備を動かすのか…」

「そうなるなぁ〜…」


俺は遠い目をした。

現在製作中のフル装備、こいつを1度シュミレーションで使ってみたのだが、いつもの倍のレベルでピーキー、所謂、鬼のような難易度なのだ。

それもそのはず、肩部にミサイルポッド、背面の方にある翼部のキャノンには副砲と追加ブースターを貼っつけ、機動力と攻撃性能の向上。

腰部にはいつもは付けていない格闘兵装、通常の周波ブレードだ。

格闘兵装は2種類あり、この周波ブレードは剣の刃の部分が振動?だかなんだかして、相手の装甲やら盾やらをガリガリと掘削するタイプのブレードだ。

もうひとつは単純な剣で、打撃重視の完全なつるぎだ。


「刀にはしなかったんだな、大尉好きそうなのに」

「整備長…否定はしませんが、あれ使うには、フル装備じゃ満足に振れませんよ」

「そいつは、そうだな」


整備長は肩を揺らしながらを答えた。

バカにされている…

刀の解説はまた今度しよう、奴が出てきた時に。


「さぁて、改造するとしますかぁ」


俺は自分の機体へとフラフラ歩き出した。

ここからまぁまぁ長い作業が始まる。


「気合い入れねば〜…」

「つっても、大尉はデータ繋ぐだけだろう?」

「YES!」

「ディー、着いてく〜」


それぞれ…いや、整備長とはそこで別れて、仕事場へ行った。




カチカチカチカチと、リズミカルな振動が空気に混ざる。

外で、グォォォン、とジェネレーターの稼働音が鳴る。


「出力ゲージ異常なし…装備表示異常なし…機体損傷度ゼロパー…」


画面を確認しつつ作業の最終チェックを済ませていく。

口に爪楊枝を含み、爽快感を感じながら。


「お〜っし…ビームキャノンから機銃まで異常なしだ、いつでも飛べるな」

「ミス無しか?完璧だな」


コクピットから出ると、整備長が待っていた。

シャロがいるかと期待してしまったが、何時間作業したやら分からないほどコクピットにいたので、おそらく部屋にいるままなのだろう。


「データミスするようなパイロットは戦場に出ちゃいかんだろう?」

「案外居るもんだぞ、候補生とかな」

「俺も候補生なんだがな…」


と口角を少しあげながら答えると、「普通の候補生は実践でエースと張り合えねぇよ」と笑いながら返されてしまった。

否定できないので目を逸らしつつ片眉を上げてもう片方を下げた。


「候補生…いえ、ディーコン大尉、準備は整いましたか?」


凛とした聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


「エイヴリル少佐…」


振り返るとそこには、将来の上司がそこに立っていた。

相変わらず長い髪である。

しかししっかりと管理は端まで行き届いているようでつやがあり…


「…大尉?」

「ん、あぁ、いえ、少しぼーっとしていて…」

「疲れてんじゃねぇのか?ずーっとこもりっぱなしだったしな」

「そうかもしれねぇ…」


俺は両目頭に右手を当てつつ答えた。

おもった寄り目に疲労が溜まっているようで、少し快感があった。

しっかし…なんだ?今の感覚…


「そうだろ…そういや、シャロはどうしたんだ?」

「あ〜シャロなら途中で飽きて、部屋で寝てるって言ってた…俺も寝てぇ…」


と本音を漏らすと、頬に微弱な痛みが走った。


「大尉〜?早くしてくださいよ?こっちとしては、向こうの援護に一刻も早く向かいたいんですからね」

「いてて…わかりましたから、そんな引っ張ることないでしょう…」


少佐は少しむっとした声でわざわざ告げてきた。

…少々鋭い目で見ているつもりなのだろうが、なんというか、身長さのせいで可愛さが勝っている気がしてならない、というかしている。


「まぁまぁ、少佐さんよ、一応大尉もサボってたわけじゃねぇんだ、あと今は5時ぐらいなんだから、夜中に出発とかでいいんじゃないか?」


整備長は恐らく俺が疲労で対応に困っていると取ったのだろう。

優しさがしみるぜ…


「ふ〜む…それもそうですね…如何せん、この人の初対面の時のイメージがちょっと残ってまして…」

「初対面ん時?俺なにかしてましたっけ?…」


手と距離を離しながら、小佐は苦笑いをしていた。

初対面時…と俺は思いにふけっていると、


「…酷い目付きで爪楊枝をくわえてました…微妙に怖くもありましたよあれは…」

「…あ〜…あれはぶっ通し作業の後でしたから、というか、あの時の態度はそれが原因だったんですか…」

「それもありますけど…なんかこう、覇気を感じたので…」

「どこぞの海賊漫画じゃないんですから…」


半笑いで返したが、少佐は真面目そうに「いやでもほんとに…」と言っている。

覇気なんてもん、俺にはないと思うのだが、少佐はそうではないらしい、ひたすら訴えてくる。

まぁ多分あの時の態度を正当化するための誤魔化しなのだろうが。

一旦少佐の気を紛らわすために、


「少佐、俺一応本当に疲れてはいるんですが…」


この場から離れるための口実を作った。

一応事実だぞ。


「…と、とりあえず、深夜頃に出発にしますからそれまでに色々整えておいてくださいよ」

「了解しやした〜」


了承を得られたので、俺はとりあえず飯を食いに行った。

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