記録No.1 模擬戦
2人のプロパイロットがいた。
その2人は、戦争が終わるまで戦場に滞在し、尚且つ戦争を終わらせた英雄だ。
公式の記録では、彼らは2人とも死んだこととなっている。
だが、正しくは隠居生活を送っているらしい。
その情報を何とかツテを使って手に入れた私は、彼らを尋ねた。
彼らは思いのほか若く、私が初めて会った時は40代後半だった。
戦争が終わったのは10年前、始まったのは60年前。
彼らはいつから戦争に参加し、そして終焉をもたらしたのか。
色々と聞きたいことを抱えた私を、ディーコンは迎え入れてくれた。
ソワソワする私を、
「まぁ、お茶でも飲んで落ち着けよ、ここにゃこれといったもんは何もないがな…」
と、笑いながら私の方を叩いて宥めてくれた。
私は、ありがたくお茶を頂き、
「あ、あの、出来ればお話を伺いたいと思いまして、、」
と単刀直入に言った。
「ふふ、いいでしょう、私達も暇だからね。」
初めに聞かされたのは、訓練生時代の話だった。
『第99wave、開始。』
無機質な声がコクピット内に響く。
と同時に、ヘッドカメラモニターのマップに、赤点のフリップが津波のように増える。
「…翼部機銃残弾80、メインブラスター付属大型機関銃残弾50…」
ポチポチ、ピチピチ…
右手でピアノの旋律を奏でるかのように、ホログラムのボードを叩く。
その視界端、微妙に年季が入ってしまっている手部がブラスターを上げ、
「報告:敵性メカバグ、射程圏内』
耳タコな機械音声が告げる。
「はいはい報告どうも、」
「はい、は1回』
「へ〜い。」
呑気な会話をしつつも、手を操縦桿、足で出力調整器を踏んだり蹴ったりしながら、敵の弾幕を避ける。
ここで解説するが、俺の搭乗機は『スピード・スパイク』、空陸機動攻撃特化、スピード重視の軽装甲、実に危ない機体である。
それなりの実力がないと扱えない、これは体験談だ。
「んっ…んん…」
しかし、俺はこの機体が好きだ、どうしようもなく。
だからひたすら練習したし、乗りこなせるように癖も見抜き、細部まで拘ってシステムをいじり倒した。
その成果が出たことで、この機体のプロと言っても良いようになって、この『訓練所』ではひたすらこの機体に乗っている。
そして、解説する際には絶対外すまいとしているのが、この場所で常に俺に着いてきてる…いや、着いてきてくれている人がいる。
「…ちょっと、敵にバレるの早すぎでしょ。」
俺の唯一無二の相棒だ。
解説の続きとして、俺と相棒の戦法を紹介しよう。
俺の戦法は、まず大体敵陣にカチコミ、突っ込み、掻き乱す。
そして被弾を避けつつ、機銃掃射や格闘技で仕留める、と言った戦法だ。
相棒の方は全くの逆で、超遠距離から高精度な狙撃を好む。
その上隠密だ、敵からすればこちらの方が恐ろしいだろう。
お互い真逆な戦法だが、相棒となっている。
…いや、むしろ真逆だからだろうか?
「うるっせぇなぁ、別に敵の弾にも当たんねぇし、そっちも楽に狙撃できて満足だろ?」
今は相棒に怒られたので抗議中だ。
で、なおかつ戦闘中だ。
「間違ってはないけど…危なかったでしょ、実践の時に。」
「被弾しなかったからセーフだろ。」
「少なくとも危険ではあるでしょ。」
「…とほほ〜、相棒の信頼が薄い…」
「あ、いや、その…」
「冗談だよ、真に受けんな。」
「…堕とすよ?」
「冗談きついぜ勘弁して。」
とまぁ、なんの縁か分からないが、優秀な狙撃手がうちに居る。
あと実にいじりがいがある。※個人の感想です。