6話 椎茸カレー
〜前回までのあらすじ〜
失踪した次男坊、武雪を追って異世界転移を果たした宇蔵と鈴。
2人はサンダーウルフに襲われて倒れ込んでしまう。
そこに現れたシスター、ルナ。
彼女の介抱により、2人は回復。
3人で息子と同じ名前の英雄「武雪」が最初に現れた街レンポルトに訪れたのだった。
6話 椎茸カレー
「サンキューベリベリマッチ!」
「あいよ!またお願いしますぜ!」
俺達は今、神光国レンポルトの裏通りを抜けて巨大なマーケットにいる。
商人が大声を張り上げ、食材、料理、服や雑貨など…あらゆる物を販売していた。
俺は3人分の昼ごはん、チーズトーストを買った。
チーズがたっぷり乗っていて美味しそうだ。
「しかし…円が使えないとは驚いたわぃ」
「両替もしてくれんとはの〜ぅ」
「お2人は、本当に遠くの場所からいらしたんですね…ゴールドを知らないなんて…」
ゴールドは、この世界の通貨だ。
金色のコインには人の絵が描かれてあって、絵の人物はゴールドを発行しているエライッス・スゴイッス3世のものだと言う。
それはそうとして、円が使えないとなると全くの無一文状態だ。
「爺ちゃん、これ売れんかのう?」
婆さんはリュックサックから椎茸カレーを取りだした。椎茸カレーとは、カレーにごろっと椎茸が入ったレトルト食品だ。とても美味しいのでよく食べている。武雪も好きだったものだ。
「ふむ、行ってみるか」
いつまでもルナに頼っているわけにもいかない。
俺はマーケットを眺めて、食料品店へと足を進めた。
「すみません、これを買っては貰えませんか?」
「へいらっしゃい!うちは買い取りもやってるが…なんだいそりゃ?」
「椎茸カレーです」
「へぇ!見たことも聞いたこともないね!だが残念…うちは食材しか取り扱ってないんだ」
「あっちに鉱物屋があるから、そこに行くといい」
「いや、これは…」
俺が椎茸カレーは食べ物だと言とうとした時
「椎茸カレーは食べ物だ」
店の奥から声が聞こえた。
「代表!?」
代表と呼ばれた大男、それはもう大きな男の体格は人間離れしていた。
「これを知っておるのか?」
「あぁ、知ってるぜ」
大男は、目を閉じた。
「懐かしいな、俺がまだ駆け出しの料理人だった頃。1人の男がこれを持って来たんだ。「これを売るから飯を食わせてくれないか」ってな…。それが随分と出世したもんだ。なぁ?武雪」
「武雪を知っているのか!?」
「あぁ、俺の名前はポンタ。ライター、店の奥まで案内してやれ。見せたいものがあるんだ」
「へ、へぃい!」
武雪を知ると話すポンタ。早速情報が見つかった!
俺たち3人はハイタッチを交わした。