5話 神光国レンポルト
山に囲まれた盆地は百を超える教会に囲まれている。
俺たちを助けてくれたルナも、教会に仕えるシスターだった。ルナと話しながら歩いて行くこと10分ほど。
俺たちは山々の中心に栄えた大国、神光国レンポルトへと辿り着いた。
「タモペル山」→→「神光国レンポルト」New!
「宇蔵さん鈴さん、ようこそ…!」
先導してくれたいたルナが振り返る。
「神光国、レンポルトへ!」
始めて入ったレンポルトは壮大で、神聖な雰囲気の街並みと、辺りに鳴り響く鐘の音に圧倒されたものだ。
「すごい街並みじゃのぉ…」
「テレビで見たヨーロッパみたいじゃ」
俺たちは街の景色を眺めながら歩いていく。
「気をつけてくださいね。ここは裏通りだけあって治安は悪いですから…」
ルナがそう言った。
「ここには家がないホームレスだったり、泥棒を働いたりロクな人がいないんです。ほら…」
ルナが立ち止まる。すると前の方からガラの悪そうな男達がニヤニヤと笑いながら歩いてきた。
「よぉ、ルナ」
「ごきげんよう、ワニーノさん」
知り合いなのだろうか。俺たちはルナの後ろで様子を見ることにした。
「いきなりで悪いんだけど、また金欠でよぉ。良かったら貸してくれねぇかなぁ?」
「はい、どうぞ」
ルナはまるで「いつものこと」のように懐から小包を取り出し、ワニーノに渡した。
「私の教会も財源が多くありませんので…無駄遣いはやめてくださいね?」
「わぁってるよ」
ワニーノはそう言って俺の横を通り過ぎていく。
「自分で金を稼がずに、他人から頂戴するのか」
「あぁ!?」
かなり小さな声で言ったつもりだったが聞こえていたらしい。
「てめぇ爺なんか文句あんのか!」
「おおありじゃ!自分の飯代くらい己で稼げ!」
「なにをぉ…!!」
ワニーノが拳を握る。
「そこまでです!」「そこまでじゃ!」
ルナがワニーノの拳を、鈴が目を三角にして俺を止めてきた。
「もう、行きますよ!」
俺はルナと鈴に連れられてその場を後にした。
「兄貴…大丈夫ですかい?」
子分にそう聞かれたワニーノは、
下を向いたまま拳を震わせていた。
「宇蔵さん?余計な揉め事を起こさないでください」
「そうだぞ爺ちゃん、くだらん争いをするな!」
「わ、悪かったわぃ」
俺は2人に叱られていた。
ルナが言うには、ワニーノは昔からああいう関係でもう慣れているとの事だった。
「てっきりカツアゲされているのかと…」
「たとえそうだとして殴り合いになったら元も子もないでしょ?」
「わ、悪かった…」
パチン!パチン!
リズミカルな音が辺りに響き始めた。
「ん、何の音じゃ?」
道の先で、1人の男がパチン!パチン!と指パッチンをしていた。
「あの人…いつもあそこで指パッチンしてるんです。不思議ですよね」
パチン!パチン!
俺は指パッチンをしている男に話しかけた。
「何をされてるんですか?」
「ハイ!」
裏声だろうか。男は高い声で返事をした。
「何をって…見てわかりません?指パッチンですよ」
「な、なるほど」
「こうやって世界を救うんです!ハイ!ハイ!」
パチン!パチン…!
「今日は…!(パチン!)指の調子が…(パチン!)いい感じです!」
「そ、そうですか…」
「俺たちはもう行くので、その…頑張ってください」
「ハイ!また会いましょう!」
パチン!パチン!
俺たちはそう言って指パッチン男と離れたのだった。