第10話 「やっぱり、私のこと口説いてるでしょ」
すいません、寝落ちしており投稿できませんでした。
昨日の分と合わせて、今日は二話投稿になります。
待ち合わせ場所に来ない佑奈を探しにいくと、彼女はイケメンな男子に告白されている最中だった。
「そ、その……気持ちは嬉しんだけど、今は誰とも付き合う気がなくて……」
申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、佑奈は告白を断っていた。
これなら放っておいても大丈夫だろう。そう思っていたのだが。
「また駄目なのかー!」
おどけた調子で頭に手を当てる男子生徒。
「えー、どうしてかな? ほら、俺って見た目も悪くないしさ、黒沢さんとなら釣り合うと思うんだよね。そんなにダメかな……」
なんだこの男子生徒……。諦めが悪いというか、妙に鼻に着くというか……。
「え! いや……決して悪いとか言うわけじゃなくて……」
うつむいてしまう男性に慌ててフォローを入れる佑奈。
「ほんとに!? 良かった……俺、諦めないからね!」
「えっ!? いや、それは、こま──」
そう言い残して男子生徒は立ち去って行った。
うーん……諦めが悪いと言えばいいのか、佑奈にそれだけ一途と言えばいいのか。あまり、外野が口に出すことでもないかもしれない。難しいところだ。
「なに、盗み見してるの」
「げっ……」
気づけば、俺の目の前に佑奈が立っていた。
若干、不満そうな顔にも見える。そりゃあ、覗かれたら嫌か……。
「すまんな……あまりにも遅いもんだったから。雛鞠の奴も来ないし……」
「あー、それもそうだね。ごめんね、向こうもしつこくて……」
シュンとした表情をする佑奈。どことなく落ち込んでいるというか、悲しさが見えるようだった。
それから、スマホで雛鞠と連絡を取ってくれた。
「雛鞠はめんどくさいから嫌だって」
「あいつ……」
『これからお願いします』っていうのは、親の前だから言っただけかよ! そんな気はしてたけどさ!
「ほら、図書館に行こうか。今日は二人だけど。あ、二人きりだからって私にドキドキしないでよ?」
そう言って、明るい声を出しながら佑奈は先頭を歩く。ただ、その声が空元気なのも、手足が少し震えているのも誤魔化せれてなかった。
「ちょっと待って!」
「うん、どうしたの?」
振り返る佑奈にどう言葉を掛けようか考えてなかった。
ええい、こうなったら直球でだ。
「どうして、もっとはっきりと断らないんだ? それとも、何か話しにくいことでもあるのか?」
チラッと彼女の方を伺うと少しだけ、驚いた表情で俺のことを見ていた。
「……どうしてわかるの?」
「どうしてって……むしろ何で誤魔化せれると思ったんだよ……バレバレなんだよ」
「そっか……まぁ、隆弘だもんね」
小さい声で呟く佑奈。
それから、佑奈は少しずつ話してくれた。
「私ね、向井君みたいな派手な男性って苦手なんだよね」
向井君というのは佑奈に告白してきた相手のことなんだろう。それにしても意外だ。
佑奈が人付き合いに関して苦手があるということにだ。言うまでもなく、佑奈は社交的な性格をしている。何か理由でもあるのだろうか。
「日常会話程度なら問題なんだけどさ、告白みたいなシリアスな場面だと、どうしても怖くなっちゃうの……」
もどかしそうに佑奈は話す。それだけ、何とかしたいと思っている証拠なんだろう。
「どうしても、小学校の時の私をいじめてた男子生徒と重なっちゃうんだ……そうなったら、私も強く言えなくて……」
難しい話だ。小学校の時のトラウマと重なってしまったら、すぐに解決するようなものじゃないからだ。
「昨日の今日で解決する話じゃないもんな。けどな」
「だよ……え?」
俺の『けどな』が予想外だったんだろう。佑奈は驚いていた。
「俺はお前の傍にいることはできるぞ。もし、同じことが合ったら、俺が代わりに断ってもいい。もし、強く言ったことで、佑奈をいじめようとするやつがいたら俺が絶対に守って見せる。こんな簡単なことしかできないけどさ、そんな重く考えるなよ」
「隆弘……」
頬を赤くさせた佑奈。
「やっぱり、私のこと口説いてるでしょ……」
「口説いてねーよ 人が真面目な話してるんだから冗談言うなよな……」
「もぅ、冗談じゃじゃないのに……」
これくらいの冗談は言えるようだし、少しは顔色も良くなったような気がする。
まぁ、こればっかりは時間をかけていかないと。この時はそう思っていた。
※
翌日の放課後。
相変わらず、勉強会に来ない雛鞠を探している時だった。
「なぁ、お前まだ黒薔薇姫のこと諦めてないの?」
「もちろん、ああいうタイプは押せばいつか倒れるに決まってるからな」
目の前には、佑奈の告白をしていた向井君とその友人が歩いていた。
「俺の見立てではあと三回ってところだな」
「はぁー、イケメンが言うと違うな」
「まぁな。さっさと折れればいいのに」
やっぱりというか、まだあきらめていなかったのか。
「なぁ」
多分、これで間違っているのは俺なんだろう。でも、佑奈の事情を考えず自分本位の考えをしていることが、どうしても納得できなかった。
それに今のあいつには勉強に集中させてあげたい。
「あ? お前は誰だよ」
突然、見ず知らずの人に話しかけられて驚いているようだった。若干、不満そうな感じに見える。
「俺は真白隆弘。佑奈の幼なじみで、理由あって勉強を面倒見てるんだ」
「それが?」
「頼む! 次の学年末試験が終わるまで、告白を待ってもらえないか!?」
だから俺は、今の佑奈の環境を守るために愚直に頭を下げてることにした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話の投稿は、本日20~21時の間になりますので、お待ちください。
ここまでで面白い、続きが気になると思って頂けたら、ブクマ・評価(目次下の☆☆☆☆☆を★★★★★に)していただけると大変、励みになります。
どうか、よろしくお願いします。