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IMAGINARY  作者: 祀
3/5

遭遇

<前回までのあらすじ>

高校生になったるいと蓮は担任の先生がとある少女を連れているのを見る。

しかし、その少女を見ることが出来たのは、るいと蓮の2人だけ。

二人は早退し、あの少女について話し合うも明日からの学校生活に不安を感じるだけとなってしまった。

 ・・・・・・・・・・・・

 

 次の日の朝、校門をくぐったのとほぼ同時、正面から投げ掛けられたその視線に、世界が静止したように思えた。

 風のざわめきも、おはようと挨拶する声も、道路を走る車の走行音すらも、音の一切が消え去ったかに思えた。


 登校したわたしたちを迎えてくれたのは、あの少女だった。

 昨日、先生の後ろに佇んでいたあの少女。

 長い黒髪に真っ白いワンピースのあの少女。


 その女の子が目の前に立ち、そしてじぃっとわたし達を見つめている。

 その視線に思わずわたしは立ち止まった。

 立ち止まってしまった。


 隣を歩く蓮は、立ち止まったわたしの手をとって引っ張るようにして歩くことを促したようだったが、それでもわたしは一歩が踏み出せずその場に立ち止まってしまっていた。


 手を引いたのは無視しろという意味だったのだろう。

 気付いていることを悟られるなという意味だったのだろう。


 さっきの瞬間、その意図に気付いてはいた。

 気付いてはいたのだが、わたしの体はどうしても動かなかった。


 わたしは…彼女の視線から目を逸らすことが出来なかったのだった。


 ・・・・・・・・・・・・

 その間、彼女からの視線はこちらに向けられ続けている

 

 じっと、ずっと、わたしとそして蓮とを一心に見ていた。

 何かを訴えるかのように。


「ほら、るい、いくぞ。」

「え、あ…」

 

 蓮もその表情に気付いたのだろう。

 彼女の物いわない訴えの正体は分からないながらにも、この少女がわたし達に何かしらの意思を向けていると感じたのだろう。

 蓮の手を引く力が、少しだけ強くなり、わたしは歩くことを強要された。

 

 わたしが蓮に手をひかれるままに校舎へ向かおうと1歩踏み出すと、少女も同じように1歩踏み出す。

 そのままわたし達が2歩あるけば2歩、3歩あるけば3歩と少女はわたしたちの後をついてくるのだった。

 

 その様子を見た蓮はわたしにそっと耳打ちする。


―おい、るい、お前の所為だからな、これ…―

―いや、だって仕方ないじゃない―

―仕方なくねーよ、気を付けなきゃならないなって昨日話しただろうが…―

―あんなところに居ると思ってないもん!

 反射的に止まっちゃったんだもん!―

―だからってなぁ…このまま連れていくのか…?―


 わたし達が息に乗せるような小声で言い合っている間も、少女はそのまま後ろをついてきていた。

 何も言わず、無言で、わたし達を見つめたままずっとついてきていた。

 

 蓮は少女の方にちらっと視線をうつし、その様子を確認すると「…はぁ…」と小さなため息を漏らして、改めて少女を正面に見るように振り返った。

 

 なんにしても、さすがにこのまま無視はできない、そう思ったのではないだろうか。

 彼は彼なりに覚悟を決めたのだと思う。


 …まぁ、「わたしの所為で覚悟を決めなくてはいけなくなった」というのが正しい気がしなくもないけれど…。


 なんにしても、さすがにこのまま無視はできないだろう。

 このまま無視を決め込んで、後ろを付いて歩くのをスルー出来るほどわたしも蓮も強くない。

 幽霊ストーカーなんて事件は正直耐えられない。


 このまま付いてくるようなら、教室の席の隣に佇んで四六時中見つめられるなんて事態も有り得る。

 そんな状況はやはり耐えられない。


 さっき立ち止まってしまった。

 彼女の視線を無視できなかった。

 昨日、この少女と視線を交わしてしまった。


 思い起こせば、ほぼ間違いなく彼女との繋がりを持つ原因はわたしだった。

 原因を作ったのがわたしなら、やはりわたしも覚悟を決めなければならないのだろう。


 既にこれはあり得ない事態ではないのだから。

 現実の一コマになってしまったのだから。


 わたしは口を開く。

「あ、あの…」


 目の前の少女はわたしの言葉に反応するように表情を和らげた。

 無表情に見つめるだけだった少女の顔だったが、少しだけ、ほんの少しだけだが、そこに少女の感情が見えたような気がした。

  

「き、聞こえるの?」

 コクコク

 少女はうんうんと首を縦に動かしている。


「れ、蓮!!

 通じてるみたいだよ!?」

「あ、あぁ…。」


 わたしは、この少女がわたしの言葉に反応して返答してくれることに少なからず気持ちの昂ぶりを覚えていた。

 コミュニケーションが取れるなら、この状況も何かわかるかもしれない。そんな希望が湧いてくる。

 蓮も動揺はしているようだったが、さっきに比べて少しは緊張が解けたように思う。


「あ、あの、あなたはなに?

 おばけ?幽霊??」


 一番わたしが気になっていることを率直に聞いてみる。

 すると

 パクパクパクパク

 少女は口を動かして何か言っているようだったが、その声はわたしには聞き取る事が出来なかった。

 

「…ごめん、聞こえないみたい。

 蓮は?」

「んー、ダメだ。オレも聞こえねーわ。」


 すると少女はゆっくりとパクパクしだした。

 

「あ、これってもしかしたら口の動きで伝えようとしてるんじゃ?」

「んーと…」


 パクパクパクパク

「も、もう1回!」

 パクパクパクパク

「「・・・・・」」

 パクパクパクパク

「「・・・・・」」

 パクパクパクパク


「あ、オレわかったかも。

 『わからない』じゃね?」


 蓮が言うと、少女は「正解!」とでも言うように勢いよく蓮を指さした。


「いや、わからないんかい。」

 思わずツッコミを入れるわたしに、少女は困ったような顔をこちらに向けるのだった。


 このままじゃ読唇術を極めないことには、YES・NOの会話しか出来ない。

 どうするかなぁ・・・

読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。

そして前回の投稿から1ヶ月以上も経ってしまって申し訳ございませんでした。


それはそうとあっという間に1月も終わりですね。

ついこの間、年が明けたと思ったばかりなのに…。


なにはともあれ今年ものんびりまったりと楽しんでいければと思っています。


このお話ものんびりまったり続けていこうと思うので、お楽しみいただければ幸いです。

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